
図書館館長なのに「借りるより買いたい本」を推すシリーズ vol. 22
日々10万冊を超える本に囲まれながら年間2,000冊以上読む図書館館長がどうしても手元におきたくて買ってしまう本とは?
「アリアドネの声」
『アリアドネの声』読了後はぐっすり眠れます。
筋書から主要な台詞まで覚えているにもかかわらず、何度読んでも想像を超える感動的ラストで涙腺崩壊です。
涙を流して泣くことが精神的に良いことは広く知られています。まさかここまで効くとは想定外です。
すでに多くの方は読まれていると存じますが、個人的に感謝の意を込めて『アリアドネの声』を推します。
主人公高木ハルオはドローンビジネスのベンチャー企業に勤める一般人。
少年期に海岸の洞窟内で兄が溺死。その時彼は安全な浅瀬で兄の帰りが遅いと思っていながら遠巻きに眺めるだけだった――。
今も夢にみるほど慙愧の念にとらわれて。
入社3年目ながらドローン操縦の講師。
ある日の実技授業、特に親しくはなかったが事故で足に障害を抱えてしまった高校の同級生と再会。
災害救助用の国産ドローン「アリアドネ」開発に携わったこと話すと、彼女からバリアフリー地下都市構想「WANOKUNI」プロジェクトで「アリアドネ」が使われていることを聞かされる。彼女はこの実験都市の住民募集に応募して選ばれていたのだった。
そして「WANOKUNI」オープニングセレモニー当日、知事の姪でもある令和のヘレン・ケラー、三重障害の中川博美がステージに登場する。
バリアフリー都市の象徴ともいえるアイドル的存在。
彼女は「多くの無理だと思ったことをできるに変えられるように努力してきた」とスピーチする。その言葉は、亡き兄の口癖だった「無理と思ったら、そこが限界」を思い出させた。
いきなりストーリーは急展開。
「活断層地震」発生。地下都市崩壊。救助隊員は侵入不可。最新高性能機体のドローンで要救助者捜索を任される高木。
地下5層のいると思われる要救助者1人の捜索と脱出までの誘導を。その1人とは三重障害の中川博美。
ドローンを巧みに操り避難経路を誘導するも、高木をはじめとする救援チームにある疑念が生じてくる。
「彼女本当は目が見えているのでは」と。
室内照明を点けたり、暴走するフォークリフトをかわしたり、盲ろう者ではありえない行動に。真実は一体?
全ての伏線がラストに凝縮されて驚愕の真実が明らかに。そして涙腺が。
著者が参考文献にあげている『さとしわかるか』もあわせてどうぞ。
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アリアドネの声
- 著者名
- 井上真偽/著
- 出版社名
- 幻冬舎
- 税込価格
- 1,760円
熱田図書館長 佐々木
5歳で角膜移植した際、ドクターからの「喫煙禁止」と「読書禁止!」との言葉を忠実に守り続けるも、なぜか現在図書館長。
趣味は合気道、英語学習、旅行、温泉、アニメ、韓流、カラオケ、SNS、読書?
その他テニス、スキューバ、サーフィン、水泳・・・多趣味でキリがありません。
今現在の推しアイドルは、「ILLIT」! かつては「少女時代」。
アフタヌーンティーは日本、英国など有名店を制覇中。
こだわりはスコーン。
文中で登場した作品たち

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さとしわかるか
- 著者名
- 福島令子/著
- 出版社名
- 朝日新聞出版
- 税込価格
- 1,760円