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【明屋書店コラボ記念コラム】沢木耕太郎先生「売り場に立つ」

2021年5月10日 投稿

昔、僕は書店で本を売っていたことがあります。

といっても、わずか数日のことでしたが、当時日本一大きな売り場面積を持つといわれていた書店を取材するため、売り場に立たせてもらったのです。

そのとき、僕は二十六歳。数カ月前に『若き実力者たち』という初めての本を出版したばかりでした。

売り場に立たった僕は、お客さんが『若き実力者たち』を棚から抜き出し、目の前に差し出してくれるというようことが起きないものかと夢見ていましたが、残念ながらそんな奇跡は起きませんでした。

しかし、ぼんやりこんなことを考えます。

もし、あれが二年後の二十八歳のときだったら、差し出された自分の本にカバーをつけるという幸せな瞬間を味わえていたかもしれないと。

そのころ出した二冊目の敗れざる者たちは、『若き実力者たち』と違い、自分でも意外なほど速いペースで増刷されていたからです。

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敗れざる者たち 新装版

著者名
沢木耕太郎/著
出版社名
文藝春秋
税込価格
770円

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