『ひかえめに言っても、これは愛』書店員&作者の座談会
『東京リベンジャーズ』の大ヒットで一躍注目を集めている“ヤンキー男子”ですが、彼らの恋を堪能できる“ラブストーリーもの”の人気が急上昇中です!
なかでも、昨年末に1巻が発売されて以来、怒涛の勢いで重版を重ねているのが、しっかり者女子とヤンキー男子の恋愛を描いた、『ひかえめに言っても、これは愛』。
そこで今回は「アラフォー男性にもめちゃくちゃ刺さる!」と話題の本作について、大ファンを公言している、リアル&電子の書店員さん3名と作者の藤ももさんによる座談会を開催。それぞれの視点で作品の魅力を語っていただきました!
取材/構成 現代ビジネス編集部(株式会社 講談社)
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ひかえめに言っても、これは愛 1
- 著者名
- 藤もも/著
- 出版社名
- 講談社
- 税込価格
- 550円
参加した書店員さんはこ3人!
・三省堂書店 海老名店 近西良昌さん
コミック担当歴は20年以上! 売れる漫画の目利きとして、さまざまな漫画賞の審査員も務める。
・ブックライブ 書店員すず木さん
年間に読む漫画の冊数は2,000冊以上!“ガラケー”時代から書店員をしている電子書籍のプロ。
三洋堂書店からはこの方!
・三洋堂書店 西尾店 鈴木普千さん
コミックやラノベなど幅広いジャンルを担当。漫画や書籍を“売る戦略”から手がける仕掛け人。
今、アラフォーがヤンキー少女漫画に首ったけ!
——『ひかえめに言っても、これは愛(以下、『ひか愛』)』は、ヤンキーと優等生の恋愛ものですが、ズバリどこに魅力を感じたのでしょうか?
すず木:ちょっと悪い男の子と、勉強ができる優等生の女の子の組み合わせは、一見定番のカップリングですが、本作にはすごく新鮮さを感じました。理由は、主人公2人のキャラクター性にあると思っています。
ヒロインの理沙は、自立することをポリシーとしている女の子。実際、今って本当に弱い女の子はほとんどいないと思うんですよね。
近西:理沙が、弱い部分を自覚しながらも、自分の力で頑張ろうとする姿はとても現代的ですよね。
すず木:そうなんですよ! 一方、ヒーローである禅はヤンキーなんですけど、ヤカラ感が出そうなバイクで理沙を迎えにくるシーンすらおしゃれなところに、新しさを感じました。
ヒロインの理沙は、しっかり者の自立女子。
ひょんなことから理沙に懐く、ヤンキー男子の禅。
近西:声を大にして言いたいんですけど、禅がとにかくかわいいんですよね。正直、40を過ぎた男性の私も胸きゅんしまくりで、「禅を誰にも渡したくない!!」と思いながら読んでいます(笑)。
友達思いで、不良グループのリーダーなんだけど偉ぶるわけではないし、リーダーすぎないところもいい! ジャンルとしては少女漫画ですが、男性にも刺さる“令和のヤンキー”像だなと感じます。
鈴木:近西さんが禅に萌えているのは、僕もすごくわかります。願わくば、うちの書店にもバイトに来てもらって、スタッフを癒やして欲しいもん(笑)。禅って、理沙に対してかなりグイグイいくけどいやらしくないし、チャラくもない。男女関係なく、惹かれる要素が多い魅力的なキャラクターだと思いますね。
「めちゃくちゃかわいい」「オレは好き」と、好きな人にはど直球の禅。
すず木:ヤンキーというと“金髪”のイメージが強いのですが、禅が黒髪であることも新鮮でした。藤ももさんに伺いたいのですが、これには何か理由があるんですか?
藤もも:主人公たちのビジュアルを考えていた際に、もちろん金髪も試してはみたのですが、なんとなくしっくりこなくて…。編集さんと「本作で描きたいのは、街中にいそうな“ネオヤンキー”だね」という話になって。最終的にいまの見た目に落ち着きました。
すず木:そうだったんですね! 黒髪で絶対に正解だと思いますし、「そうしてくださってありがとうございます!」という気持ちです(笑)。
40代男性もときめいた!二人が“恋に落ちた瞬間”
————特に作品の魅力を感じたシーンはどこでしょう?
近西:いくつもあるのですが、一つあげるなら第1話のラストです!
二人の恋の始まりを予感させる、第1話のラストシーン。
近西:「自分の心臓から さっき乗ったバイクの音がした」というモノローグが付いているんですけど、このシーンがとにかくいい! 胸の高鳴りをドキドキではなく、ドッドッっていうバイクの音に重ねて表現しているところに、めちゃくちゃときめかされました!
すず木:『ひか愛』を読んだ人なら絶対にはずせない名シーンですよね!
バイクに乗って走る禅と理沙のバックに描かれている風景が、どんどん輝いていくところもめちゃくちゃよくて。
人が恋に落ちる瞬間をこんな風に描くなんて「藤ももさん、天才か!」と思いながら読みました。
二人の恋の始まりを予感させる、第1話のラストシーン。
鈴木:1巻の表紙を見たときに、「どうしてこんなにキラキラしてるんだろう?」って思ったんですよね。でも、このシーンを見て、すべて納得。1話目のラストに、これから始まる二人の物語のワクワク感がすべて詰まっていますよね。
すず木:そんなキラキラのシーンがあるからこそなんですけど、私はヒロインが「人生は自力!!!︎」と叫ぶシーンもツボで(笑)。ときめきをこれでもかと詰め込んだ世界に、いきなりこんなシーンを入れてくるなんて、藤ももさんの新境地だなと思いました。
みんなからは、しっかり者で完璧だと思われている理沙だけど、一人「素直でかわいい女の子になりたい…」と、落ち込むことも…。
すず木:今回の主人公たちは二人とも目尻が上がっていて、まつげもピンとしっかり立っていますよね。絵のテイストが、これまでとは少し違う気がしているのですが、意図的なものなのでしょうか?
二人とも、意志の強さが伝わる目がポイント。
藤もも:そうですね。理沙も禅も、意思がはっきりしたキャラクターなので、その点は意識しました。あと、最近の漫画のトレンドとして、目力の強いキャラクターが増えているなという印象があったのも理由の一つです。
「女性目線」の魅力
——みなさんは、日々、さまざまな漫画を読まれていると思いますが、少女漫画の魅力はどんなところにあると思いますか?
近西:そもそも少女漫画って、一冊の中に自分ではなかなか経験できないような恋愛の要素がふんだんに盛り込まれていて、読むととにかく癒やされるんですよね。
たとえ現実で恋愛をしていない人でも、自分のお気に入りのキャラクターが、好きな人との会話や触れ合いを通して心が動かされているシーンを見るだけで、ニヤニヤしてしまうというか。
その点、『ひか愛』については、きゅんに加えて笑いの要素もあって、癒し効果は絶大(笑)。
禅と出会うことで、変わっていく理沙の表情にもきゅん!
鈴木:そうそう、きゅんするんだけどめちゃくちゃ笑えるんですよね!
ここ最近、少年少女の青春を描いた“ジュブナイル系”と呼ばれるジャンルが10〜20代の男性を中心に人気なのですが、少女漫画ってまさにジュブナイルなんですよね。
少年誌や青年誌に載っている、男性目線のものもとてもいいのですが、女性目線で描かれた作品には、また違った角度の魅力があって、私からしたら宝の山!(笑) 男性も共感する作品がたくさんあると思います。
すず木:最近、男性向けとカテゴライズされているような漫画にも、キラキラのトーンが使われいたり、絵のタッチが少女漫画のように繊細だったり、少し変わってきている印象があって。そろそろ“少年”“少女”という垣根を越えて、漫画を楽しむタイミングがきているんじゃないかなと感じています。
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ひかえめに言っても、これは愛 1
- 著者名
- 藤もも/著
- 出版社名
- 講談社
- 税込価格
- 550円
少女漫画を楽しむコツは“壁目線”?
——男性読者は、少女漫画のどんなところに注目して読むと楽しめるのでしょう?
鈴木:やっぱり、女の子のナチュラルなかわいさですね。これは、少女漫画というジャンルだからこそ表現できるんだと思います。
好きな人を前にさまざまな表情をみせる、等身大の女の子像に共感!
近西:鈴木さんがおっしゃったように、少年漫画と少女漫画に出てくる女の子ってかわいさの種類が違うんですよね。特に女性の作家さんが描く女の子の描写は、少年漫画にはないナチュラルなかわいさがあります。
すず木:そうですよね。主人公が自然体の女性であるほど、男女両方に響くんじゃないかなと思いますね。
——ちなみに、みなさんは『ひか愛』を誰目線で読んでいるのでしょうか?
鈴木:私の場合は、誰でもないです。もともと登場人物の目線で読むというよりは、壁になりたい派。『ひか愛』で言うなら、禅のバイクが踏みつけているアスファルトとか(笑)。
一同:あはは(笑)。
近西:私の場合は、どちらかというと理沙目線ではあるんですけど、シーンによっては二人のそばに立っている木や、近くにいる猫になったりしているかも…。
地面や壁、木、猫…理沙と禅を第三者目線で読むと、きゅん増し増し♡
すず木:私も最初は理沙目線で読むんですけど、気づくと禅の仲間の一人のような気持ちで二人を眺めているところがあります。
近西:すごいわかる(笑)。
鈴木:この作品は、一歩引いた視点で読んでいる人も多いんじゃないかなと思いますね。
もちろん、キャラクターの気持ちに感情移入する部分はたくさんあるんですけど、それ以上にキャラクターがきゅんきゅんとしているところを見て、きゅんきゅんするのが楽しい作品じゃないかなって。
——「少女漫画を読んでみたいけど、読み方がわからない!」という方は、まずは『ひか愛』を壁や猫目線で読んでいただくところから始めてもらえたらいいかもしれませんね(笑)。
『ひか愛』は、男性にこそ楽しんでほしい!
——みなさんの書店では、『ひか愛』はどんな層が手に取っていますか?
近西:うちの書店については、メインのお客様である中高生から40代の女性が購入してくださっているので、かなり王道の売れ方をしていると思います。ただ、私はこの作品を男性こそ読んでほしいと思ってるんですよね。
鈴木:男性にも読んでもらいたいっていう気持ち、同感です。
私が中高生の頃って、同級生の女子から少女漫画を借りて読むのが、わりと当たり前の文化としてあったんですよね。それが、どのタイミングからなのかは定かじゃないのですが、少女漫画は女の子が読むものという流れがなんとなくできてしまっている気がして…。
近西:手を出しにくい人もいるかもしれないんですけど、全然恥ずかしくないし、当店の場合はまずは手に取って読んでほしいから、『ひか愛』を男性もよく使う通路に平積みしています。
鈴木:これからは、男とか女とかっていうくくりをなくして、色んな漫画作品に触れてほしいなと思うんですよね。
その点、電子書店の場合は男性も少女漫画を手に取りやすい環境なんじゃないかと思うんですけど、ブックライブさんの『ひか愛』の購入者層はどうですか?
すず木:購入者は30代の女性が一番多くて、その後40代女性、20代女性と読者層が続くんですけど、おっしゃる通り、男性もけっこういらっしゃいますね。なかでも、特に多いのは40代の男性です(笑)。
近西:やっぱり!!
鈴木:そんな予感はしてましたよね(笑)
リアル書店と電子書店の関係って…?
——ところで今回、せっかくリアルと電子の書店員さんが集まったので伺いたいのですが、お互いどんな印象を持っていますか?
近西:正直なところ、最初に電子書店が参入してきた時は“ライバル”としか考えてなかったんですよね。でも、長年書店員を続けてきて、だいぶ意識が変わりました。今はライバルではなく“共存関係”だと思っています。
鈴木:私も同じですね。
近西:以前なら、電子で売れていると聞くと「電子に売り上げを持っていかれて、紙の売り上げが減っちゃうじゃないか!」って思っていたんです(笑)。
一同:あはは(笑)
近西:でも、今はたとえ紙で売れてなかったとしても、電子で買われているということがわかれば、嬉しいんですよね。電子が動いているのなら、いずれ紙に戻ってくる可能性にも繋がると思っています。
鈴木:私も電子とは連携して、一緒にやっていきたいという思いが強いですね。リアル書店にいると、電子書店の広告バナーの力を実感することが多いんですよ。ただ、電子書店でバナー広告を出しているタイミングって、リアル書店の店頭からは、その作品が消えてしまっていることも多くて。
近西:ほんと、そうなんですよね。
鈴木:たとえば、広告が出るタイミングでお互いに情報共有ができれば、紙で購入したい方のニーズにも応えられますよね。
すず木:私自身は、実は紙の本が大好きで、好きな作品については紙も電子も買っているということも少なくありません。
紙の本は、いつまでも手元に置いておきたいコレクターアイテムとしての価値もあると思っています。
鈴木:紙で絶版になっているものが、電子なら読めるというパターンもありますよね。
すず木:ありますね。リアルと電子、いずれも書店なのでライバル関係にあると思われがちですが、同じようで実は特徴がまったく違う。
近西:それぞれの良さを生かしながら共存していくことが、漫画や書籍業界自体を盛り上げることに繋がっていくと思っています。
——みなさんのお力で、近い将来『ひか愛』でリアル書店と電子書店の連携プロジェクトが企画されることもあるかもしれないですね⁉ 書店員の皆さん、そして藤ももさん、今日はありがとうございました!
少女漫画は少女だけが読むものにあらず。ちょっと疲れている時に、癒やしときゅん、そして笑いをくれる『ひか愛』、男性にも自信を持ってオススメです!
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ひかえめに言っても、これは愛 1
- 著者名
- 藤もも/著
- 出版社名
- 講談社
- 税込価格
- 550円