
図書館館長なのに「借りるより買いたい本」を推すシリーズ vol. 10
日々10万冊を超える本に囲まれながら年間2,000冊以上読む図書館館長がどうしても手元におきたくて買ってしまう本とは?
「異常【アノマリー】」
図書館では本を分類整理して並べます。それは、小説であったり、作者であったり、洋書、児童文学、哲学、歴史、科学、産業、芸術等々どの図書館でも同じように統一されています。
では「異常【アノマリー】」はどう分類すべきなのだろうと職業柄どこか違和感を覚えたのが本書です。
舞台は飛行機の中。
製薬会社の顧問弁護士をつとめるアフリカ系アメリカ人のジョアンナ。穏やかな家庭人にしてその正体は殺し屋のブレイク。15年を経て人気作家になったフランス人ミゼル。その他にも一癖もふた癖もある多種多様な乗客を乗せたエールフランス006便。
ニューヨークに向けて降下をはじめたとき、突然乱気流に巻きこまれます。彼らの運命はいかに。
ここまでは、賞をとった作品にしては期待外れなフランス小説というのが本音です。そこからです。異常が始まるのは。
その異常は作中のみならず私の頭の中にも。一体全体乗客乗員に何が起きているのかという謎と、これまでどの小説からも感じ取ったことのない異様な感覚。
夢中に読み進めていくと、この本はミステリーなのか、サイエンスフィクションなのか、何なのかまるで自分自身が現実世界と切り離されていく不可思議な感覚に襲われます。ハッキリ言って多幸感とは程遠い気持ち悪い感覚。異常。
図書館の分類としてはフランス文学なのですが、哲学なのかとさえ思えます。あらすじを書きたくてもネタバレ注意なのでこれ以上は書けません。
この本をお勧めする一つの理由は、この本が当図書館にただの1冊も寄贈されていないからです。多くの人気本などは必ず数冊は図書館に寄贈されます。本屋大賞はじめ一大ブームとなるような本なら尚更です。
つまり、「異常【アノマリー】」を購入した人たちは手元に置いているのです(リサイクルショップへ売ってはいるようですが)。
私にとっては二度と読みたくない本ですが、なぜかまた読んでしまいます。
いやーな感覚がいつまでも記憶に残るので、皆様にお勧めしてこの得体の知れない感覚を共有することで私の気持ちを軽くしたいと思い立ったワケです。誠に申し訳ございません。
分類はホラーなのか?
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異常
- 著者名
- エルヴェ・ル・テリエ/著 加藤かおり/訳
- 出版社名
- 早川書房
- 税込価格
- 1,320円