
図書館館長なのに「借りるより買いたい本」を推すシリーズ vol. 19
日々10万冊を超える本に囲まれながら年間2,000冊以上読む図書館館長がどうしても手元におきたくて買ってしまう本とは?
「逆ソクラテス」
著者は『ゴールデンスランバー』など独特のユーモアと巧妙な伏線回収で有名な伊坂先生。
では今回なぜ『逆ソクラテス』推すのか。
それは子どもが主人公だからです。純粋に大人社会の理不尽や先入観に対して疑問を投げかけ、既成概念にとらわれない自由な発想で行動するのを見事に描き、読後の爽快感は真夏のキンキンに冷えたコーラかビール以上です。
小学6年生がこんな大人顔負けのこと言ったり、したりするはずないだろうと自分の少年時代を重ねなると出来すぎ感を抱きます。
が、本書は大人になった自分が少年時代の僕を回想する形で語られています。子供の頃の記憶は既に朧げになっていますが、誰にでも忘れえぬ子供の頃の体験:“Seminal Experience”があるはずです。多少改変美化されることも。
5つの短編で構成され、いずれの作品にも心に残る名言がでてきます。それら一つ一つには深い意味があり、物語の鍵となっています。
『逆ソクラテス』では、「俺はそうは思わないけど」など大人たちの先入観に対して子供であっても自分の意見を持ち、自ら考えることの大切さを教えてくれます。
『スロウではない』では、「未来のお前は笑っている。それは間違いない」といじめられていた生徒に先生がキッパリ言うなど名言満載です。
引越した主人公が大人になってあの少年時代の彼らと同じ道を歩めなかったことを寂しく思うも、彼らの今の幸福を嬉しく思い涙するラストには読者も感涙です。
『非オプティマス』では、「人が試されるのはだいたいルールブックに載っていない場面なんだ」など。子供たちが大人になって社会に出たとき向き合わなければならないことについて数々の名言で語り掛けます。
『アンスポーツマンライク』では、「人生の残りは、あんたのだって、余裕で、永遠だよ」でしょう。バスケ試合の残り1分を永遠という例えから、更生しようとする犯罪者に対して主人公の少年がかけた言葉です。
『逆ワシントン』では、友人が父親から虐待されていると誤解していた子供たちに、その父親が子供たちに意外なことを言います。「息子の様子が変だったら気にかけてほしい。俺が脅して口止めしているかもしれない。全部を真に受けて大人を信用しないで、疑うときは疑うんだ」と。
人生のステージで感じとることは変わると思いますが、何度読んでも感動させられます。
老若男女問わずまさに手元に置くべき一冊です。
「逆ソクラテス」はこちら

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逆ソクラテス
- 著者名
- 伊坂幸太郎/著
- 出版社名
- 集英社
- 税込価格
- 1,540円
熱田図書館長 佐々木
5歳で角膜移植した際、ドクターからの「喫煙禁止」と「読書禁止!」との言葉を忠実に守り続けるも、なぜか現在図書館長。
趣味は合気道、英語学習、旅行、温泉、アニメ、韓流、カラオケ、SNS、読書?
その他テニス、スキューバ、サーフィン、水泳・・・多趣味でキリがありません。
今現在の推しアイドルは、「ILLIT」! かつては「少女時代」。
アフタヌーンティーは日本、英国など有名店を制覇中。
こだわりはスコーン。
文中で登場した作品たち

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ゴールデンスランバー
- 著者名
- 伊坂幸太郎/著
- 出版社名
- 新潮社
- 税込価格
- 1,155円