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【作家コラム:長田信織先生】~私と地元~

2020年11月21日 投稿

ライトノベル作家の長田信織です。お世話になっております。
 電撃文庫で『数字で救う!弱小国家』シリーズなどを手がけました。
 と、ここでもうひとつわたしにはプロフィールがあります。
 実は三洋堂書店で長く書店員として務めておりました。つまりわたしは書店員作家でもあるんですね! いまは専業作家ですが。
 ともあれそうしたご縁などもあり、今回はお世話になった三洋堂書店さんのリニューアルに寄稿させていただきます。
 書店員としてではなく作家として書店でお仕事するのは、作家としては当たり前ですがわたし個人としてはなんだかむず痒いような気分もありますね。お手柔らかにー。

地元の思い出

 さて、田舎で本を読むのに必要なものはなにか、ということです。

 わたしの地元は愛知の三河の隅っこのほう。要するに中部地方の田舎です。
 そのような場所でも文明はあるので、学校や図書館で触れる本のおかげで本好き少年というのはちゃんと生まれます。
 中学生のわたしがそうでした。
 学校の図書室にあった赤川次郎先生の『三毛猫ホームズ』シリーズに夢中になって、図書室には置いてないぶんも先生の著書を読もうと思って図書館に通いつめたりもしました。
 1日に1冊は必ず読み終わり、休日には3冊も5冊もまとめて読んでしまうこともありました。
 鞄の中にぎっしりと貸し出し上限数まで本を詰めて図書館から帰って、翌週にはすべて読み終えて返却しに行くのが定番です。
 やがて図書館の本では飽き足らず、最新の本を買うために本屋さんに通いつめることになりました。読書家としては当たり前すぎるルートですね。
 そして当たり前なことに、なぜか買う本が無くても本屋さんに吸い込まれるようになってしまいます。もはや動物の巡回ルートです。定期的に本屋さんの匂いを嗅がないとなんだか不安になります。くんくん、インクの匂い。よし、縄張り確認。パブックロフの犬。

 ここでひとつ、本好き少年に試練があります。田舎には公共交通機関がありません。
 と言うと大げさですが、少なくとも中学生には本当に使えません。
 ではどうするのか。
 歩く? まさか。めちゃめちゃ遠いです。田舎は横に広いのです。
 まあお分かりですよね。自転車です。一人一台の乗用車が、田舎では必要不可欠ですから。
 しかし、問題が起こります。本という荷物です。
 鞄に詰め込んだ本が、自転車のペダルをものすごく重くします。いや本当に重いですよね、たくさんの本が詰まった鞄。
 図書館の上限いっぱいまで借りた本だったり、なぜか3冊くらい鞄に詰めて本屋に向かって、帰りはさらに重くなっている鞄。なんだこの重いのは。うん分かってる。本ですね。
 高負荷トレーニングじみた自転車ダッシュを毎日キメます。
 正直言ってつらいです。必ず汗だく。夏なんて、お店の入り口でクーラーにしばらく当たってからじゃないと奥に進めません。だって汗で本を汚しちゃいそうだから。仕方ないなあって見て見ぬ振りをしてくれていた店員さん、その節はありがとうございます。
 そうまでしても、先に本棚に来ていた読書家に取られてしまっていたりする時もありました。
 それでもなおやめられない本屋さん通い。気分は本の虫ペダル。

 田舎で本を読むのに必要なもの、わかっていただけたと思います。
 タフネスです。

 三洋堂書店は地方がメインです。通いつめていた方たちには、きっと前カゴの重みやスポーツバッグの肩紐が体に食い込むあの痛み、ちょっと分かっていただけるのではないでしょうか(笑)

 でも、あの重いペダルも、本屋さんから帰る時だけは重さを感じませんでしたね。
 鞄の中にある新刊を「早く読みたい」と思いながら家に向かう瞬間は、まさに地に足がつかないほど浮ついて、心が軽くなっていましたから。

 そんなわたしが大人になっても、めちゃくちゃ重い本の山をうきうきと並べる書店員になってしまったのはまあ仕方のないことだったと思います。特に自分の本だともはや重さを感じません。
 まるで紙のようでした。これがほんとのライトノベル作家ですね! HAHAHA!

 おあとがよろしいようです。

著書紹介

 異世界モノというジャンル、ご存知でしょうか。たぶんご存知だと思います。
 ではゲーム理論というジャンル、ご存知でしょうか。まあご存知ですよね。
 この作品は――あ、ゲーム理論はご存知でない? というか普通そんなの知らない?
 えー、だって海外ドラマ『NUMBERS』ってあるじゃないですか。
 あ、それも普通は知らない?
 いやいけます。いけますから。待ってください担当さん。
 えーっとドラマはですね、数学で犯罪事件を解決するっていう超面白い犯罪ドラマなんですよ。それをですね、ライトノベルの異世界モノでもやりたいんですよ!
 剣と火薬の近世欧州世界で! 滅亡の危機が迫る王国で! 現代の数学者が「戦略で勝つ」んです! 映画『イミテーション・ゲーム』で枢軸軍との戦争を数学による緻密な戦略で操った天才数学者のアラン・チューリングみたいに!
 よくわからない?
 いやほんとに数学は面白いですって。ほんとほんと! ダメ? いやわからん? じゃあとりあえず一章だけ書くので読んでください!
 
 ――と、作者のマイナーな趣味を通すべく担当編集さんを説得して書いた一作です。
 ぜひ買ってください。面白いですって。ほんとほんと!
 よろしくお願いします!

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数字で救う!弱小国家 電卓で戦争する方法を求めよ。ただし敵は剣と火薬で武装しているものとする。

著者名
長田信織/〔著〕
出版社名
KADOKAWA
税込価格
671円

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