menu open

カドフェス『きのうの影踏み』

2021年6月10日 投稿

【私のプチ自慢】

中津川店のロウランです。

私のプチ自慢として、今までの人生で一人だけ作家の先生とお会いしたことがあります。

それもかなりのビッグネーム。今や直木賞作家として押しも押されぬ有名作家である辻村深月先生です。

たまたまその地方に挨拶に来ていた辻村先生が私の勤めていた書店にも来てくださったときに、文庫の担当者が呼んでくれてお話しする機会を得ることができました。(文庫担当者に好きな作品を話しておいてよかった!)

正直、緊張して大したことをお話しできなかったのですが、とても嬉しかったのを覚えています。

さて、今回は辻村先生の短編集をご紹介したいと思います。

【広いぜ辻村ワールド!】

失礼ながら私は辻村先生をミステリーの人だと思っていました。
それは特段間違っているわけでもないと思うのですが、それだけではないのが直木賞作家です。

とはいえ、私の理解もそう遠いわけではありません。

デビュー作『 冷たい校舎の時は止まる』の主人公『辻村深月』の名前からしてミステリー作家らしいネーミングです。(推理小説の中には作者と主人公を同じ名前にするということがよくあります。有栖川有栖先生や綾辻行人先生など。)

上述のデビュー作もメフィスト賞。メフィスト賞は本来ミステリーに限らない文学賞ではありますが、ミステリーあるいはミステリーの文脈を持った受賞作が多い賞です。『冷たい校舎の時は止まる』もミステリーに分類されるでしょう。

ですが、辻村先生の作品はミステリーだけにとどまらず、青春小説から人情もの果てはホラーまで。多岐にわたる作品を生み出しています。エッセイも面白かったです。ちょっとオタク向けでしたが。西尾維新先生の『本題』という対談本でも興味深い話をしていたので

さて、今回紹介するのは、短編集きのうの影踏み。角川文庫から刊行されている怪異集です。

ちなみに冒頭部分がKADOKAWA様の70周年サイト(コチラ)にてコミカライズされています。

13篇の短編が収録されています。一遍10分程度で読めるので、電車の中で読む、あるいは病院の待合室で読むのにはちょうど良いバランスです。ちょっと怖い話なので心拍数に影響が出るかもしれませんが……。

悲鳴を上げるような怖さではないのですが、理解した瞬間にちょっと怖気が立つような、そういう怖さのお話だと思いました。語り手があんまり怖そうにしていないのもそれに拍車をかけています。

文体もいたって平穏で、語り手も興奮した様子ではなく淡々と語っているような調子。しかし、徐々に怖さを滲ませてくる。いわゆる『怪談』とは少し違って、怖いものに気が付いてしまったような気持ちになりました。

本編に触れすぎるとネタバレになるのでこれぐらいにしておきますが、解説も面白いです。

解説は朝霧カフカ先生。文豪ストレイドッグスの原作者の方です。ちなみに冒頭で紹介したコミカライズの作画は同じく文豪ストレイドッグス作画の春河35先生でした。
朝霧先生はこの作品について「やぶれめ」の物語だと称しています。そして「やぶれめ」に気づいてしまうことが「ほんものの怪異」であるとも述べています。
私が抱いた感想の理由みたいなところが解説において分析されていて、「なるほど」と膝を叩いてしまいました。

【さいごに】

読んでくださり、ありがとうございました。

夏といえば文庫フェアの季節です。各地の書店にて文庫のフェアが開催されていますのでお立ち寄りの際にはぜひご覧ください!

辻村作品を読むのなら『スロウハイツの神様』からがオススメです。そこから『凍りのくじら』を経由して講談社文庫を制覇したあとに、そのほか『ツナグ』や『かがみの孤城』などを読むと、辻村ワールドの変化に寄り添えると思います。参考になれば幸いです。

↑↑↑タップで詳細・注文へ↑↑↑

きのうの影踏み

著者名
辻村深月/〔著〕
出版社名
KADOKAWA
税込価格
616円

書いた人

中津川店 ロウラン

 

普段はラノベやプラモなどを担当しています。

一番好きな辻村作品は『名前探しの放課後』

この記事は役に立ちましたか?

4