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【バイヤーO】の現代ミステリ概論 第1回 綾辻行人(あやつじ・ゆきと)編

2020年12月9日 投稿

唐突に始まりました、ミステリ好き【バイヤーO】が、愛する作家と作品を推しまくる連載です。
連載タイトルはラーメンズ好き【バイヤーO】が(実質)解散の喪失感の中で思いついたもので、内容は堅苦しいものではありません。
第1回は私を本格ミステリの魔に引き込んだあの大家でございます。
拙稿中敬称略ご寛恕の上、ご笑覧いただければ幸いです。

神か悪魔か綾辻行人か! 新本格ミステリの嚆矢、『十角館の殺人』

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十角館の殺人

著者名
綾辻行人/〔著〕
出版社名
講談社
税込価格
946円

1987年、作者26歳でのデビュー作。
それまで社会派リアリズム、ないしトラベル・ミステリが主流であった日本のミステリに風穴を空けた、ルネッサンスの革命的作品です。
そこで標榜された、「本格ミステリ」を語る、有名な台詞を引用します…それが一番、端的なので。ありがとうエラリイ。


《僕にとって推理小説とは、あくまで知的な遊びの一つなんだ。小説という形式を使った読者対名探偵の、あるいは読者対作者の、刺激的な論理の遊び》
《ミステリにふさわしいのは、時代遅れと云われようが何だろうがやっぱりね、名探偵、大邸宅、怪しげな住人たち、血みどろの惨劇、不可能犯罪、破天荒な大トリック……》

血塗られたいわくある孤島で、大学ミステリ研のメンバーの間に起こる連続殺人を描いたこの作品で、作中人物の口を借りて行われたこの発言は、そのまま実作の形で、特大の衝撃と共に顕現しました。
解決場面におけるある一行は、色褪せることない、日本ミステリ史上屈指の破壊力を誇るパンチラインです。
それにやられたら、コミック版を読んでさらにニヤニヤしましょう。

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十角館の殺人 1

著者名
綾辻行人/原作 清原紘/漫画
出版社名
講談社
税込価格
715円

そしてこの作品に呼応するように、有栖川有栖や歌野晶午、我孫子武丸、法月綸太郎らが「刺激的な論理の遊び」を掲げた作品をひっさげてデビュー、日本の推理小説に「新本格」という大きな潮流を生み出します。
それはまさに革命であり、その輝かしい嚆矢として語り継がれる名作がこの『十角館』なのです。


「館シリーズ」最高傑作! 超スケールの詩情に酔え、『時計館の殺人』

綾辻はその後、建築家・中村青司の手により、様々に趣向の凝らされた「館」における殺人事件を描く、「館シリーズ」を陸続と発表、同シリーズは「新本格」の代名詞的存在となります。
『水車館』『迷路館』、『人形館』に『黒猫館』、いずれも魅力溢れる作品たちですが、その中の最高傑作として衆目の多く一致するのが『時計館』でしょう。

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時計館の殺人 上

著者名
綾辻行人/〔著〕
出版社名
講談社
税込価格
792円

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時計館の殺人 下

著者名
綾辻行人/〔著〕
出版社名
講談社
税込価格
792円

針のない時計塔をいただき、時計に埋め尽くされた館で、オカルト誌の取材班を巻き込んで展開される連続殺人。
「館」の機構をフルに生かしたトリックは、スケール感と精緻さもさることながら、その必然性と背後にあるドラマ、その美しさと悲しさで忘れ難い印象を残します。
謎解き小説を志向しながら、しかしそれを無味乾燥なパズルにしない、独特の世界観構築と詩情。
綾辻行人という作家の得難いオリジナリティであり、その質量共に最も充実した結実であると思います。


童謡見立ての究極にして至高! もはや芸術だろ、『霧越邸殺人事件』

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霧越邸殺人事件 上

著者名
綾辻行人/〔著〕
出版社名
KADOKAWA
税込価格
704円

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霧越邸殺人事件 下

著者名
綾辻行人/〔著〕
出版社名
KADOKAWA
税込価格
792円

『時計館』の世評の一方で、個人的に綾辻作品で最も偏愛するのがこの作品…ということは、古今東西のミステリの中で最推しの作品ということになります。

信州山中、雪に閉ざされた豪奢な館、「霧越邸」。吹雪に迷って訪れた劇団の面々を見舞う連続殺人。訪れた者の未来を映すという館で、その暗合と童謡の調べに導かれた殺人劇の行き着く先は…。

原稿用紙千枚を超える巨編でありつつ、美しい工芸細工のような繊細さで組み上げられた、本格ミステリの美を体現する作品。作品全体を覆う静謐な叙情は、他に類を見ない綾辻美学の集大成です。
デコラティブな殺人場面も、それを紐解く論理も、物語が描く構図と結末も、そのすべてがこの上なく美しい。
個人的に最もミステリに魅入られた原体験であり、この風景を探して私はミステリを読み続けているといって過言ではありません。


読んでください。夜中に、一人で… 『眼球綺譚』という珠玉

しかし綾辻はキレイなミステリだけの作家ではありません。
ホラーへの造詣は深く、ホラー・ミステリ「囁き」シリーズや、純正スプラッタ「殺人鬼」シリーズにその「異常な愛情」を見ることができます。
そうした黒い潮流の中で、個人的に偏愛するのがこちら。

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眼球綺譚

著者名
綾辻行人/〔著〕
出版社名
角川書店
税込価格
616円

七編のホラー短編は、グロテスクな奇想と、ミステリに通底するサプライズに満ちており、どこをとっても妙なる美味の作品集です。
それぞれの作品は独立していますが、ヒロインの名前は「咲谷由伊」として共通しています。
その後の綾辻作品にも「再生」する、謎めいたファム・ファタル。まずはここで出会っておきましょう。


キャラ萌えもいけるぜ!! 「Another」シリーズ

そして綾辻ワールドを代表するヒロインはもう一人、左眼の眼帯をイコンとする例の彼女。

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Another 2001

著者名
綾辻行人/著
出版社名
KADOKAWA
税込価格
2,640円

ある地方都市の中学校を舞台に、何年かに一度、その一クラスを見舞う「災厄」を描く学園ホラーのシリーズ。
初弾である『Another』はアニメ化・映画化もされた人気作、続編の『AnotherエピソードS』を経て、今年作者七年ぶりの新作長編として『Another 2001』が発表されています。
いずれも煉瓦本的な厚さを誇る巨編ですが、リーダビリティは高く、あっという間に読ませます。
作者特有の世界観の翳りを保ちながら、そこに色づくヒロインの魅力がそれを助けていることは間違いないでしょう。
見崎鳴…『Another』の儚さもいいけど、『2001』の包容力もいいよね。


もう一度言う、神か悪魔か綾辻行人か!(このコピィが好き)

いかがでしたでしょうか。
私にとって綾辻行人という作家は、本格ミステリという一生モノの趣味に引きずり込んでくれた特別な存在です。
小学生の時、『十角館』の衝撃に一度死に、『霧越邸』で再生したのでしょう(謎)。
他にも『どんどん橋、落ちた』や『フリークス』、「深泥丘奇談」シリーズなど語られるべき作品は多いですが、まずは『十角館』を手に取っていただいたあなたが、必然として出会われるものと信じて、今回はここまでといたします。

※商品は各店舗でも取扱い中です。

書いた人:バイヤーO
某大学ミステリ研出身のミステリ好きバイヤー。
ミステリとの馴れ初めは厳密には金田一少年→十角館→斜め屋敷→霧越邸、です。

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