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けんごさん小説紹介「少女、落下中」

2025年12月19日 投稿
@kengo_book

「いきなりこんなことをお願いするのも変ですが、出来れば助けてもらいたいです」 あなたの目の前に、突如として落ちてきた少女。さて、どうやって助けますか?? 『少女、落下中』 短くて、不思議な話が、全45編収録された、ショートショート集です📚 #本の紹介 #おすすめの本 #小説 #小説紹介 #献本 #PR

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少女、落下中

著者名
多未宿紅葉/著
出版社名
主婦と生活社
税込価格
1,430円

【スタッフのつぶやき】

はい、まあ皆さんこんばんは。今日の映画、じゃなくて本は、多未宿紅葉さんの『少女、落下中』です。

落下中、事故でしょうか?
怖いですねえ、恐ろしいですねえ。
落下「中」といってるということは、そんな長時間落ちるもんですかね。なんか不思議ですね。どういうことでしょう。読んでみましょうねぇ。
あとでまた、お会いしましょうね。


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表題作の『少女、落下中』は、
え?
という終わり方です。


いいですかね。
わたくしども昭和世代は、星新一という世界で鍛えられてきたわけです。清水義範というパスティーシュ世界に振りまわされてもきたわけです。
舐めてもらっては困ります。
いしいひさいち が出てきたとき、東京の漫画家は衝撃を受けたわけです。なにしろ、それまでなんとなく描いていた東京のマンガ界に、大阪から明確に起承転結でビシバシ笑いを取る4コマで殴り込みをかけてきたのですから。(いしい しんじ が言ってました。たしか。)
そういった枠組みからすると、『少女、落下中』は、いしいひさいちが来る前の東京のマンガ界というか、淡い星新一というか、そんな気がしたのです。初見は。けんごさんは一体どういうおつもりで今回紹介されたのか、文句の一つも言ってやろう、と思って読み進めたのですが・・・。



ところが、これが多彩なのです。
星新一は、天下一品に行って「これからラーメン食べますーっ」とか、
ココ壱番屋に行って「カレー食べますーっ!」て感じ。

でも多未宿紅葉さんは、
スーパー行って幕ノ内弁当買って食べようと思ったら、いつの間にかフードコートに座っていてカレーを食べていたような気分。それも子供のころ母親が作っていたカレー。なんで?
ざっくり言うとファンタジー的。

ドラえもんは、どこでもドアという明確な構成物で
いわば「SFでーす!!」と叫びながら、のび太の家から遠くの場所に行きますが、
多未宿紅葉さんは、住宅街の角を曲がって振り返ったら今来た町がない、みたいな感じで、構成上で文学的にシームレスに少し不思議を表現していて、それでいて、何か懐かしくて暖かいところもあるのです。

してみると、星新一のような強烈なオチがなくても、短編全体で感じればいいやと思うのです。落語だと人情噺系などには、オチ(サゲ)がなかったり弱かったりするものがあります。漫才だって、「もうええわ」のところはそれほど大爆笑ということもありません。それでも落語・漫才の全体の良さは変わりません。

子どものころ読んだ児童書(だったと思いますが)で、神が地球を観察している場面がありました。最初は植物ばかりだったのが、あるとき地面から根っこを引き抜いて歩いていく個体が出てきました。神様は、この個体はこういうやつなのだと思って、「これはこれで良し」と思ったのでした。動物の進化はそんなことはないのですが、カテゴリーが違うものを受け入れる思考過程をその様に表現したのだなとあとになって思いました。私は星新一っぽい誰かと当てはめて読もうとしていたのですが、読み進めていく中で、違うのだと気づいたのです。
漢字の書き取りをしていると、ゲシュタルト崩壊を起こして「あれ?こんな字だったっけ」ということがあります。
そんな感じで、一つの守破離的な自分の中での再定義というか再構成というか、セグメントの中に落とし込むのではなく、隣にもうひと枠作るというか、自分の中だけの体験を感じることができた気がしたのです。

私はどうしても古代中国の戦の小説を読むので、国を統一する目的以外は枝葉と捉えがちです。また一般に我々はミステリ小説は謎を解きがちですし、恋愛ドラマも成就に向けた努力を応援しがちですし、銀行は不正や権力に立ち向かいがちだし、町工場はロケットを飛ばしがちですが、目の前にあるものを感じるのも大事なんじゃね?
と2回読んで思いました。
数学者の岡潔も「人間が人間である中心にあるものは科学性でもなければ論理性でもなく理性でもない情緒である。」
て言ってますしね。(強引)


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はい。またお会いしましたね。
いかがでしたか?
私は1回目読んだときは「宇宙人の現地調査」、これが一番だと思いました。
でもね、もう一回読むと違ってくるんです。少し不思議で、懐かしくて、でもちょっと暖かい短編が、なんとなく心に残っていくんですね。不思議ですね。
みなさんも「あとがき」も含めて、時々読み返してみてくださいね。

それではまた、来月お会いしましょう。 サヨナラ、サヨナラ、、、サヨナラ。

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