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【明屋書店コラボ記念コラム】光文社文庫版『戻り川心中』ができるまで

2021年5月13日 投稿

もう十五年以上も前のことです。光文社文庫編集部の編集長となった私は、どんな企画を進めるべきか迷っていました。そんな時に『戻り川心中』の文庫が在庫切れで一般書店に流通していない状況だということを知りました。

日本推理作家協会賞受賞作である「戻り川心中」を初めて読んだのは二十代の頃でしたので、この当時でもかなり以前のことでありました。しかし、記憶は鮮明でした。

モノトーンを思わせる静謐な美文で綴られつつ、意表を突くように鮮烈な「色彩」の描写が織り込まれる独特な作品世界に酔い、巧妙に仕組まれたトリックや、事件に潜む「真相」の衝撃と相まって夢中で読んだことが思い出されました。同書に収録されている各作品も含め「花葬シリーズ」と呼ばれ名作揃いです。

これはちゃんと読める状態にしなければ。私は直ぐに連城三紀彦先生のご住所を調べ、光文社文庫から刊行させていただけないかというお願いの手紙をお送りしました。
その頃、業界内で“連城先生は、お目にかかることはおろか連絡をつけることも難しい方である”との噂が流れていました。ところが、なんとか調べた番号にお電話をし、メールをお送り申し上げた末、遂に連城先生から直々に文庫刊行承諾のご連絡をいただけたのです。

信じられない幸運でした。できあがった光文社文庫版『戻り川心中』の解説には「我が国のミステリの歴史において、最も美しくたおやかな名花である」と書かれています。

『戻り川心中』を光文社文庫におさめることができ、皆さんに読んでいただけるようになった――。

この一事だけで私は編集長として大切な仕事ができた、そんなふうに思えました。永く読み継がれていってほしいと願っています。

文:光文社 文芸局 局長 鈴木 広和

⇒光文社ホームページ

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戻り川心中 傑作推理小説

著者名
連城三紀彦/著
出版社名
光文社
税込価格
586円

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