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【作家コラム:徳永圭先生】~私と地元~

2021年6月15日 投稿

文化の風が吹く場所

こんにちは! はじめましての方ははじめまして。徳永圭と申します。

 

このたび『帝都上野のトリックスタア』(講談社タイガ)刊行に合わせ、コラムを寄稿させていただくことになりました。

 

ちなみに私、バリバリの名古屋育ち・名古屋在住です。

出生地は母の郷里である三河なので、自著のプロフィール欄には「愛知県出身」とありますが、ともかく人生の大半を名古屋で過ごしてきました。

 

大学だけは県外でしたが、都会でも田舎でもない、このぬる~い居心地の良さが忘れられず、卒業後は即Uターン就職。その後小説家デビューし、ありがたいことに地元で10年書き続けられております。

 

東海地方が舞台の作品を書いたときには、読者さんから「地元が出てきて嬉しかった」なんてお声を予想以上にいただき、ご当地ならではのあたたかさをひしひしと感じています。

三洋堂書店さんの思い出

さて、そんな我が地元・愛知に根ざした三洋堂書店さんといえば、とっても印象深い思い出がひとつ。

あれは5年前。春に第一子を出産し、母となってはじめて迎えた初夏のことでした。

出産を経験された方ならご存知かと思うのですが、産後の生活というのはそりゃもう壮絶です。とにかく眠れない、休めない。第一子の場合はとくに、我が子がなぜ泣いているのかもわからないまま、手探りでがむしゃらに乗り越えていくしかない。

 

おまけに私の場合、妊娠中の経過が思わしくなく、長い入院生活で体力が落ちきったところからの育児スタート。社会との縁をすべて断たれてしまったみたいな心細さとともに赤子と連日家に閉じこもり、2ヶ月も経ったころにようやく、家の外に目を向けられるだけの余裕が戻ってきたのでした。

そろそろ散歩くらいはしてみようかな、と。

 

とはいえ、初回はどこを目指そう?

ヨボヨボの私でもベビーカーを押して行けるところ……。

まだ外出先でオムツ替えや授乳をする自信はないから、次のタイミングまでに帰ってこられるところ……。

でもでも、せっかくだから、少しでも気晴らししたい。

世間の空気を吸いたい。

 

そうだ――三洋堂書店にしよう!!

 

当時、我が家は市内の別の場所から引っ越してきて1年ほどでした。すぐ近くに大きな書店があるっていいよね、なんて言っていましたし、実際、書籍購入にDVDレンタルにと日頃からお世話になっていました。

が、ふにゃふにゃな赤子とふたりきりで初の外出となると、勝手がまったく違うわけです。たった徒歩数分の道のりも、当時の私にとってはおっかなびっくりの大冒険。

 

バリアフリーな経路シミュレーション、よし!

替えのオムツ、よし! 万一の際の着替え、よし!

出発直前に授乳を済ませ、オムツを替えてベビーカーに赤子を固定。

泣かないでよ~、う○ち出ないでよ~と、祈るような心地でベビーカーを押すこと十分弱。

 

そうして久しぶりに最寄りの本屋――三洋堂書店の自動ドアをくぐったときの感動は、きっと生涯忘れられないと思います。

まるで、ずっと遠ざかっていた”文化”の風が、ブワッと正面から吹きつけてきたような。

明るい照明。華やかに飾られた店内。

数え切れないほどの、本、本、本……。

以前なら見慣れていたであろうそうした光景が、あのときは本当にキラキラして見えた。目頭がじんと熱くなって、うっかり店内で涙ぐんでしまいそうだった。

 

失ってわかる、というのはよく聞く文句だけれど、当たり前のように書店が――”文化”への入り口が身近にある。

その有り難みが、あのときほど身に沁みたことはありません。

自著のご紹介

……と、思い出語りをさせていただいたところで、自著のご紹介です。

 

新刊『帝都上野のトリックスタア』(講談社タイガ)は、大正時代の帝都に暗躍する元詐欺師たちの冒険活劇です。「悩める人々を救う、裏社会の掃除人がいるらしい」――そんな噂を追い、主人公・勇がたどり着いた男とは?

また、近刊ボナペティ!臆病なシェフと運命のボルシチ』(文春文庫)は、脱サラしたOLが見習いシェフの青年をスカウトし、理想のビストロを開店するべく奮闘するお話です。読んだらお腹が空きますよ~!

 

他にも、地元が出てくる作品としては、片桐酒店の副業』(角川文庫)がおすすめです。

舞台のモデルとしたのは岐阜県各務原市で(実は!)、酒屋の副業である宅配便をめぐり、名古屋市内も登場します。店頭にない場合、お手数ですがお取り寄せくださいませ。

 

ではでは、新刊・既刊とも、お楽しみいただければ幸いです!

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帝都上野のトリックスタア

著者名
徳永圭/著
出版社名
講談社
税込価格
847円

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ボナペティ! 臆病なシェフと運命のボルシチ

著者名
徳永圭/著
出版社名
文藝春秋
税込価格
814円

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片桐酒店の副業

著者名
徳永圭/〔著〕
出版社名
KADOKAWA
税込価格
748円

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