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【バイヤーO】の現代ミステリ概論 第5回 島田荘司(しまだ・そうじ)編

2021年2月3日 投稿

ミステリ好き【バイヤーO】の偏愛暴露企画。
第五回になりますが、「弾はまだ残っとるがよ」どころか、ここにきてバズーカを発射することにしました。
新本格のゴッドファーザーであり、日本のミステリ史にふっとい文字で名を刻む、豪腕の巨匠をご紹介。
拙稿中敬称略(どころか略称使用)にてご寛恕ください。

御手洗潔、鮮烈のデビュー!! 『占星術殺人事件』

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占星術殺人事件

著者名
島田荘司/〔著〕
出版社名
講談社
税込価格
990円

1981年刊行のデビュー作。

密室で殺された画家は、六人の処女から一体の完璧な女を作る計画を手記に遺していた。その計画をなぞる様に、画家の娘たちが惨殺死体として発見される。
事件から四十数年後、迷宮入りとなった連続猟奇殺人の解明は、一人の青年探偵(とその助手)に託された…

ミステリファンが日本ミステリ史上の最高傑作を問われた際に、この作品の名前を挙げる人も多いであろう、殿堂入りの名作です。
圧巻の見事なトリック、おどろおどろしい怪奇趣味、ホームズ直系の天才にして変人探偵…御手洗潔の魅力。島田荘司という巨大な才能が、デビュー作にしてその才気を爆発させています。

個人的に惜しまれるのは、あまりに鮮烈なトリックを某所でパクられているため、初読の衝撃が減じてしまったことなのですが…同様の嘆きを抱えている同世代のミステリファンは多いのではないでしょうか。
変なところで目にする前に、ミステリ史上最高級のトリックを、一刻も早く体験されることをおすすめいたします。


近距離パワー型、破壊力A!!  『斜め屋敷の犯罪』

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斜め屋敷の犯罪

著者名
島田荘司/〔著〕
出版社名
講談社
税込価格
880円

御手洗潔シリーズの第二長編。
宗谷岬に立つ、斜めに傾いて建てられた奇妙な館、「流氷館」を舞台に繰り広げられる殺人劇。

私のミステリの原体験の一つです。トリックが明らかになった瞬間、テンション爆アゲになって、「やべー!」って叫びながら家中走り回ったことを憶えています(当時小学生)。

トリックを成立させるために、斜めの館を建ててしまう豪腕もそうなのですが、それを「画」として説得力のあるものとして提示できるのが、島荘(敬意を込めた略称)の島荘たる所以。
ダイナミックなトリック・メーカーとして他の追随を許さない巨匠ですが、絵を描いてトリックを構想するという芸術家肌(CDも出してるし)、脳の造りがひと味違うのだと思います。
あまりに明瞭に提示される「画」の衝撃、ぜひ走り回れるだけの広いところで受け止めてください。

××の×のシーン、思い返すたびに笑ってしまうわ…。


島荘浪漫の精華、『異邦の騎士』にむせび泣く

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異邦の騎士

著者名
島田荘司/〔著〕
出版社名
講談社
税込価格
880円

妻子殺しの記憶に怯える記憶喪失の男。彼が築いた小さな幸せを、御手洗は守ることができるのか…

ここまでの二作とは趣きの異なる、都会派のサスペンス・ミステリです。
ダイナミックなトリックも、怪奇/伝奇趣味もなく、ただ哀切で、ロマンティックな悲恋譚。
他の作品では正直首を傾げる場面が多い島荘女性観ですが、この作品のボーイ・ミーツ・ガールは素晴らしいです。
多くは語りません。ただ、「御手洗潔最初の事件」ではありますが、最初には読まないで下さい、とだけ申し添えます。


島荘流「本格ミステリー」体現の雄編、『奇想、天を動かす』

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奇想、天を動かす

著者名
島田荘司/著
出版社名
光文社
税込価格
733円

御手洗潔と並ぶもう一人のシリーズ探偵、警視庁捜査一課・吉敷竹史シリーズの長編。
浅草で浮浪者風の老人が起こした小さな殺人事件が、やがて思いもかけない展開と発展…雪原を走る列車に現れたピエロとその消失、列車を持ち上げ脱線させる「巨人」の謎…を見せることになります。

「幻想性のある謎を提示し、それを論理的に解決する」という作者の「本格ミステリー」観の体現として、この作品ではいっそバカバカしいまでにスケールが大きく、不可解な謎が提示され、推理によって解体されます。
そしてそうしたミステリとしてのプロットが、「社会派」としての主題、批評性と連結され、「社会派本格」としてのいわく言いがたいインパクトをもたらしてくれます。
トリックメーカーとして、ストーリーテラーとして、まったく独自の地歩を築く巨匠の豪腕が発揮された、「本格ミステリー」の雄編です。

この「本格ミステリー」路線では御手洗シリーズ、『ロシア幽霊軍艦事件』もおすすめ。

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ロシア幽霊軍艦事件

著者名
島田荘司/〔著〕
出版社名
角川書店
税込価格
649円

御手洗シリーズでは軽量級ですが、歴史ロマンと怪奇趣味とが不可分に結びついた美しい謎と、その論理的でスマートな解決が兼備された佳作です。島荘流「本格ミステリー」としては、その最もバランスのよい結実ではないでしょうか。

…品切れしとるやないかい!!


ミステリ・パスティッシュの最高傑作!! 『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』

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漱石と倫敦ミイラ殺人事件

著者名
島田荘司/著
出版社名
光文社
税込価格
858円

御手洗ものでもヨーロッパの歴史伝奇を絡めたり、また国内の歴史に材を取った『写楽 閉じた国の幻』などの作例があるように、イマジネーションのままに古今東西を跳梁する島荘ワールド。

その時空超越路線(?)の代表的な傑作が、英国留学中の夏目漱石と、かの名探偵シャーロック・ホームズが出会い、共に倫敦を騒がす事件に挑む、というこちらの長編。
当時のイギリス社会の活写、漱石・ホームズのキャラクターと語りの面白さ、呪い殺されてミイラになる、という奇っ怪な謎とその華麗な解決…どこを取っても抜群の完成度とエンタメぶりで、島荘は本作で直木賞を受けるべきであったと確信しますが、まあ「無冠の帝王」というのが島荘らしいところではあります。
パスティッシュ作品ですが、「完成度」という意味では島荘作品中随一だと思いますし、パスティッシュというくくりではミステリ史上の最高傑作ではないでしょうか。

また近作ではホームズ・パスティッシュ長編『新しい十五匹のネズミのフライ』もございます。こっちでは漱石ではなくワトソン氏が頑張ってます。

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新しい十五匹のネズミのフライ ジョン・H・ワトソンの冒険

著者名
島田荘司/著
出版社名
新潮社
税込価格
1045円

トリックもストーリィも豪腕そのもの。島荘は読んだら止まらない。

以上のご紹介は、この巨匠の足跡のほんのごく一部に過ぎません。私自身長編も全部読めてませんし…

御手洗シリーズという実作で楔を打ち、年若の作家たちを推薦して世に出したことで、日本の本格ミステリ隆盛に果たした功績は計り知れない島荘ですが、何よりの魅力は実作者として、トリックとストーリィ両面における、フルスロットルの豪腕ぶり。
冤罪問題などのノンフィクション、社会批評の著作も多く、また上記代表作以外にも数多くの小説作品を、今も意欲的に発表し続けています。

その中には正直、苦笑を誘う迷作・珍作の類もないではないのですが、それでも共通して言えるのは、どれもが読む手を止めさせない、吸引力のあるエンタテインメントであるということ。
その得体の知れない迫力、豪腕のリーダビリティに、ぜひブッ飛ばされてみて下さい。


※商品は各店舗でも取扱い中です。

書いた人:バイヤーO
ミステリ好きバイヤー。記事を書いて予約投稿した後、間の悪さに慄然…
いろいろとある世の中だけど、私も皆と一緒で御手洗潔が大好きです。

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