図書館館長なのに「借りるより買いたい本」を推すシリーズ vol. 2
日々10万冊を超える本に囲まれながら年間2,000冊以上読む図書館館長がどうしても手元におきたくて買ってしまう本とは?
「その悩み、古典が解決します。」
現代社会、多くの人が悩みを抱えながら日々過ごしていることと思います。それは昔も大差ないでしょう。
この本は現代人へ古典文学を参照にして悩みを解決に導くものです。と思って手に取って読み始めたら、不謹慎ながら面白いのです。
過去の文献を例にしつつ、悩みごとの相談に対して解決策を単純に示しますが、難しい古典を読む必要は全くありません。
初めの悩み事相談は「身分違いの恋」です。
その答えは簡単です。「そんなルールはない!」あるいは「今あったルールは変わりますから周りの目を気にせず貫いてください」と。
そこで古典の引用がでてきますが、現代語訳された数行の抜粋のみです。ここでは井原西鶴の『西鶴諸国ばなし』。
周りの目が気になってしまうというあなた自身の心の問題については、古今東西の色々な本を読んで、自分の境遇と同じような身近な例や、フィクションでも身近なものでもなくて心支えとなるはずの本はあると本書は説きます。古典だけでは解決しないことを著者は重々承知なのです。
次の悩み事は「中学受験に合格したがレールを敷かれたような人生に退屈を覚えて、先の見える人生がつまらなく感じてどうしたらいいか」です。
またもや単純明快な解決策を提示します。「なにをやってもいい」と。さらには「思い切って失敗することをやりましょう」とさえ。
引用される文献は上田秋成の『雨月物語』中の短編『菊花の約』。主人公の名セリフ「死生命あり」という意味は、運命は天の定めで誕生から死までレールが敷かれている運命論です。
が、著者いわく「運命で決まっているならば何をやってもいいではないか」と。どうせ失敗してもレールがあるなら失敗を許された権利を得たとも言い換えられる。気楽に好きなことに手をだせばいい。
どうせレールの上に戻ってくると思えばしたいことをやれるうちにやればいいのです。ただし、法に触れるようなことはやめておきましょう。
他にも
「どうしたらオーラを出せますか」に対して「ひとまず一芸を極めてみましょう。しかし、オーラを出さない境地もあります」とか。
「陰キャです。どうしたら陽キャになれるでしょう」には「たき火をしましょう」と。
「優等生に恋をしています。話が合うとは思えないのでどうしたらいいでしょうか」との悩みには、バッサリと「無教養は死を招きます」と。
「心配性で何事にも備えを怠りませんが気疲れしてしまいます」には「ときには備えない勇気を持ちましょう」と。
「アニメが大好きですが両親が理解してくれません。どうしたら認めてもらえるでしょうか」という価値観の共有の悩みに対しても「時間の経過を待つか、外圧をかけるかしましょう」と新時代の文化や先進国が認めたという新しい価値観を認めさせる方法を伝授します。
本書で取り上げる解決策の裏付けには古典からの引用がありますが、著者の巧みな解説とウイットは何度読み返しても笑いと感動で飽きが来ません。
ぜひ手元に置いておきたい一冊です。
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その悩み、古典が解決します。
- 著者名
- 菱岡憲司/著
- 出版社名
- 晶文社
- 税込価格
- 1,870円
熱田図書館長 佐々木
5歳で角膜移植した際、ドクターからの「喫煙禁止」と「読書禁止!」との言葉を忠実に守り続けるも、なぜか現在図書館長。
趣味は合気道、英語学習、旅行、温泉、アニメ、韓流、カラオケ、SNS、読書?
その他テニス、スキューバ、サーフィン、水泳・・・多趣味でキリがありません。
今現在の推しアイドルは、「ILLIT」! かつては「少女時代」。
アフタヌーンティーは日本、英国など有名店を制覇中。
こだわりはスコーン。
文中で登場した作品たち
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西鶴諸国はなし
- 著者名
- 〔井原西鶴/著〕 西鶴研究会/編
- 出版社名
- 三弥井書店
- 税込価格
- 1,980円
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雨月物語 日本の古典
- 著者名
- 上田秋成/〔著〕 佐藤至子/編
- 出版社名
- KADOKAWA
- 税込価格
- 792円