図書館館長なのに「借りるより買いたい本」を推すシリーズ vol. 4
日々10万冊を超える本に囲まれながら年間2,000冊以上読む図書館館長がどうしても手元におきたくて買ってしまう本とは?
「同志少女よ、敵を撃て」
今回紹介するおすすめ本は既に読まれた方も多い作品です。2021年アガサ・クリスティー賞受賞作ですから。
私は、絵画の様に美しく凛とした少女の表紙を書店で見かけて思わず買ってしまいました。家の書棚面展示に最適という軽い動機で。
ところが、舞台は1941年第二次世界大戦、主人公はソ連狙撃手という設定。日本人にとっては重く暗い過去。独ソ戦争が冒頭から描かれ、あまり気乗りしない話だろうとたかをくくって読み始めたら、一気に読了してしまいました。
ソ連辺境の村に暮らす狩りが得意な少女セラフィマは、ドイツ軍に母と村民を殺され、自身も殺されかけたところをソ連の女性兵士に救われます。
呆然自失としているセラフィマに、女性兵士イリーナは言い放ちます。「お前は戦いたいか、死にたいか」と。母を殺したドイツ狙撃手への復讐を誓い、セラフィマは戦うことを決意します。
セラフィマは女性狙撃手を養成する訓練学校でイリーナに戦士として鍛えられます。訓練学校卒業の最終課題「何のために戦うのか」という問いに、「女性を守るために戦います」と答えるセラフィマ。
本のタイトルと彼女の戦う意義から推察して、伏線が張られたなと読者目線で冷静に汲み取ったつもりだったのですが―。
戦場での同志達の死。狙撃兵への蔑視。おぞましい人間の所業。
数々の艱難辛苦を経て少女セラフィマは超一流のスナイパーへ変貌し、そしてついに母の仇の狙撃手と相対して復讐を果たします。著者デビュー作とは思えない息をつかせぬ流れでここまで一気に読み進めますが、伏線回収がまだ終わっていません。
その時は突然やってきます。復讐を果たした直後。著者が「無数の感情」と表現しているように、セラフィマが思いもよらぬ「敵」を撃つ刹那私は涙してしまいました。著者は私なぞの予想したはるか先に伏線を張っていたのです。
最近書店で面展示されなくなっているようなので、再度一推ししておきます。
まだ読んでいない方には、質の高い小説としても、歴史の勉強としても、何より表紙が綺麗なので、是非お手に取っていただきたい一冊です。
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同志少女よ、敵を撃て
- 著者名
- 逢坂冬馬/著
- 出版社名
- 早川書房
- 税込価格
- 2,090円
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同志少女よ、敵を撃て
- 著者名
- 逢坂冬馬/著
- 出版社名
- 早川書房
- 税込価格
- 1,210円
「同志少女よ、敵を撃て」コミカライズ版はこちら
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同志少女よ、敵を撃て 1
- 著者名
- 鎌谷悠希/漫画 逢坂冬馬/原作 速水螺旋人/監修
- 出版社名
- 早川書房
- 税込価格
- 880円
熱田図書館長 佐々木
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