menu open

【熱田図書館コラムVol.6】歴史上から消えた稀代の英雄 徳川慶勝(尾張藩主)から目が離せない「冬の派閥」を推す

2025年1月19日 投稿

図書館館長なのに「借りるより買いたい本」を推すシリーズ vol. 6

日々10万冊を超える本に囲まれながら年間2,000冊以上読む図書館館長がどうしても手元におきたくて買ってしまう本とは?

「冬の派閥」

あなたの推しの武人はだれですか?
私は「徳川慶勝」です。「え、誰、知らない」という声が聞こえるのも当然。私も図書館館長になるまで地元の英雄を知らず恥じ入るばかりです。

時は幕末、将軍徳川慶喜が大政奉還した後、薩長を主力とする朝廷側軍勢が江戸城に向けて進軍する中、朝廷側と幕府側の間に立って日本国の内戦を避けるため東奔西走した人物こそが、尾張徳川のご老公徳川慶勝。

王政復古とともに新政府の重職に就き、徳川か新政府かどちらに与するか決めかねていた多くの諸国大名に新政府率いる朝廷軍との不戦を説き伏せ、一方で将軍慶喜や抵抗した会津や桑名の藩主であった弟たちの助命嘆願を新政府に受け入れさせた。
それほどの偉人が知られていない謎、知りたくありませんか。

かつて第一次長州征伐の際、総指揮官を嫌々担った徳川慶勝は薩摩藩士西郷隆盛を参謀に取り立て、長州藩に対して寛大な処分で幕引きした。そのつもりであったが、重臣の首を差し出すことになった長州藩側からは恨まれることになってしまった。

また遡ること数百年、薩摩藩はかつて尾張藩の治水工事を徳川家から押し付けられ、甚大な経済的人的損害を被った。尾張藩からは感謝の念があるも薩摩藩からは徳川に対して長年にわたり恨みを抱かれていた。

幕末の足音が迫りくるなか、朝廷の臣下たるべしという藩祖義直公の遺訓を守り、徳川幕府派と朝廷派に割れていた尾張藩内を「青松葉事件」と呼ばれる幕府派粛清を断行し身を切る思いで藩内を朝廷派にまとめた。結果朝廷軍は江戸への行軍において大した戦いをすることもなく、西郷と勝海舟の会談で幕引きとなった。

その際江戸城をどう扱うかという問題があったが、徳川家筆頭の尾張藩かつ新政府議定でもある徳川慶勝が預かることで徳川側からも新政府側からも異論できない落としどころにしたわけである。


新政府樹立に大貢献すれども、疎まれ、新政府議定職は5か月間で辞任、また名古屋藩知事もたった7か月の在任。そして尾張藩士には新政府の重職はほとんど与えられなかった。
欧米列強がアジアを席捲する国際情勢を把握し、国力を低下させる内戦だけは避けるべく奔走した稀代の英雄はこうして歴史上から消されてしまった。

歴史の闇に葬られた推し、いや偉人「徳川慶勝」を共に世に広め、いつかNHK大河ドラマにしましょう!(司馬遼太郎氏がいなければ坂本龍馬が知られていなかったように。)

徳川慶勝に関する書籍として、奥山氏の「葵の残葉」「葵のしずく」も併せてどうぞ。

「冬の派閥」はこちら

↑↑↑タップで詳細・注文へ↑↑↑

冬の派閥

著者名
城山三郎/著
出版社名
新潮社
税込価格
737円

熱田図書館長 佐々木

5歳で角膜移植した際、ドクターからの「喫煙禁止」と「読書禁止!」との言葉を忠実に守り続けるも、なぜか現在図書館長。

趣味は合気道、英語学習、旅行、温泉、アニメ、韓流、カラオケ、SNS、読書?
その他テニス、スキューバ、サーフィン、水泳・・・多趣味でキリがありません。

今現在の推しアイドルは、「ILLIT」! かつては「少女時代」。
アフタヌーンティーは日本、英国など有名店を制覇中。
こだわりはスコーン。

文中で登場した作品たち

↑↑↑タップで詳細・注文へ↑↑↑

葵の残葉

著者名
奥山景布子/著
出版社名
文藝春秋
税込価格
880円

↑↑↑タップで詳細・注文へ↑↑↑

葵のしずく

著者名
奥山景布子/著
出版社名
文藝春秋
税込価格
1,870円

この記事は役に立ちましたか?

9