あけましておめでとうございます。
寒さもいよいよ募る一月ですが、冬こそ読書本番、と気合が入るのは私だけでしょうか。
乾燥に注意しながら部屋を暖めて、ゆっくり楽しんでいただきたい、三洋堂おすすめの文庫作品をご紹介します。
まずは…ヴァン・ショーが美味しい季節ですね。この記事を書き終えたら一杯やりたいです(もちろんアフター5にですよ!)。
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ビストロ・パ・マルに持ち込まれる謎を、料理と一緒に美味しくいただきます!
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マカロンはマカロン
- 著者名
- 近藤史恵/著
- 出版社名
- 東京創元社
- 税込価格
- 792円
下町のフレンチ・レストラン、ビストロ・パ・マル。シェフ・三舟が美味しい料理と共に、客の抱えた謎や悩みを解決するシリーズ。
それぞれ料理にちなんだ多彩な謎とドラマが、「日常の謎」あるいは「コージィ・ミステリ」としてのやわらかさ、あたたかさの中に、作者らしいシニカルさを隠し味として描かれます。
デビュー以来ずっと読んでいて、『ガーデン』『スタバトマーテル』といった愛憎劇や『サクリファイス』のような情念のドラマに魅力を感じていた作家ですが、こういう軽やかな作品もいけるんだ…という新鮮な驚きと共に、一方の代表作と勝手に認定しているシリーズです。
パ・マルシリーズでは『タルト・タタンの夢』『ヴァン・ショーをあなたに』に続く第三作ですが、ここから読んでもまったく問題ありません。
読後は熱いヴァン・ショーと共に、快い余韻にひたってください。
連続殺人鬼「ハサミ男」は、自分の模倣犯を捜し始める…ミステリのマスターピース
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ハサミ男
- 著者名
- 殊能将之/〔著〕
- 出版社名
- 講談社
- 税込価格
- 1,012円
「殺人鬼による模倣犯探し」という、オフビートな展開の先に驚愕の真相が待つ、メフィスト賞受賞のデビュー作。
狂気の世界にどっぷりと浸かりながら、醒めた知性で端正に描かれるミステリとしての完成度は、デビュー作ということが信じられません。
多くを語れない種類の作品ですが、断言できるのはこれが国内ミステリのマスターピースであるということ。
作者は2013年に急逝。殊能センセーの知的に歪んだ世界を、もっともっと読ませて欲しかったです…
犯人の視点で描かれる連続殺人劇の果てに、世界崩壊の感覚が待ち受ける猟奇ミステリ
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殺戮にいたる病 新装版
- 著者名
- 我孫子武丸/〔著〕
- 出版社名
- 講談社
- 税込価格
- 847円
女性を陵辱し殺害する、悪逆のシリアル・キラーの心象風景が描かれ続ける作品なので、生理的嫌悪感を感じる方もいるかもしれません。
しかし、それを乗り越えた先にある、この作品の真髄に触れるために読み続けて下さいと、胸を張っておすすめできる名作です。
ある種「殿堂入り」的な作品なので、ミステリ好きにはいまさらですが、未読の方は必読でしょう。
ただ、名曲「夢をあきらめないで」を平静な気持ちで聴き続けたい方にはおすすめしません(私は無理でした)。
キャラクタと会話の軽妙、伏線の快感…伊坂小説の魅力が詰まったシリーズ第一作
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陽気なギャングが地球を回す 長編サスペンス
- 著者名
- 伊坂幸太郎/著
- 出版社名
- 祥伝社
- 税込価格
- 691円
三作発表されている人気シリーズの第一作。
嘘が見抜けたり、演説の天才だったり、体内時計が正確だったり…あと天才スリ。メンバーそれぞれが異能を持つ銀行強盗チームがトラブルに巻き込まれるクライム・コメディ。
愉快なキャラクタたちの軽妙なやり取りに、読んでる間ずっとニヤニヤ、ストーリィの構造が見え始めると、巧みな伏線術にテンション爆アゲ…ジェットコースター・ノベルとは、こういう小説のことを言うのでしょう。
シンプルに「楽しさ」という点で、伊坂作品はおろか日本のエンタテインメント史上でも屈指の作品だと思います。
いや、めっちゃ楽しいんで読まないと損です。本当に。
犯人が鏡の中に消えたとしか思えない殺人の謎に、刑事・貴島柊志が挑む
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i(アイ)鏡に消えた殺人者 警視庁捜査一課・貴島柊志
- 著者名
- 今邑彩/著
- 出版社名
- 中央公論新社
- 税込価格
- 770円
ホラーの名手でもある作者の、本格ミステリのシリーズ「警視庁捜査一課・貴島柊志」の第一作。
密室状況で女性作家が殺され、足跡の血痕が部屋の鏡へと続いている…犯人は鏡の中へと消え去ったのか?
ホラー的なイマジネーションが、本格ミステリの合理で解決される、一粒で二度美味しい作品。
シリーズ探偵・貴島柊志も、刑事という職業、さらにハードボイルドな名前と若干異なり、どこか飄然とした魅力のあるキャラクターです。
『「裏窓」殺人事件』に繋がるシリーズも、ぜひどうぞ。
二人の女子中学生が直面する「死」を通して、現代を抉る社会派青春ミステリ
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希望が死んだ夜に
- 著者名
- 天祢涼/著
- 出版社名
- 文藝春秋
- 税込価格
- 869円
縊死体で発見された少女と、その殺害容疑で逮捕された同級生。二人の女子中学生の友情と、その悲しい結末が描かれる青春ミステリ。
現代社会に対する問題提起を含むことで、「社会派」と呼ばれる作品は数多ありますが、私が近年読んだ中で最もそのインパクトを受けた作品です。
のぞみとネガが過ごす青春はピュアで愛らしく、だからこそそこに落ちる影と、やがて訪れる悲劇が忘れ難い。
優れた青春ミステリでありつつ、社会派の強いインパクトを持つ、日本のミステリ史上でも稀有な達成であり、このコロナ禍の時代にあって、その主題はますます重みを増しているように思います。
2020年発売の『あの子の殺人計画』も読まねばですね…。
事故・事件、文化や流行…九人の人気作家が過ぎし「平成」を描くアンソロジィ
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平成ストライク
- 著者名
- 青崎有吾/〔著〕 天祢涼/〔著〕 乾くるみ/〔著〕 井上夢人/〔著〕 小森健太朗/〔著〕 白井智之/〔著〕 千澤のり子/〔著〕 貫井徳郎/〔著〕 遊井かなめ/〔著〕
- 出版社名
- KADOKAWA
- 税込価格
- 858円
令和の時代も早くも三年めですが、こちらは過ぎし「平成」をテーマにした書下ろし短編のアンソロジィです。
ランダムにいくつか拾っても、福知山線脱線事故、ネット炎上、「渋谷系」、消費増税、そして東日本大震災と、これが全て同時代に起きたことかと思うと、平成もまたいかに激動の時代だったかが思われます。令和で同じ企画が編まれるとしたら、まずはコロナ禍は避けて通れないところでしょうね…
それぞれのトピックにアイデアを凝らした作家陣も、ミステリ畑を中心に、井上夢人、貫井徳郎といったベテランから、白井智之、青崎有吾らの新進気鋭まで充実のラインナップ。
平成の総決算と言うに足る好アンソロジィ、令和三年の始まりにいかがでしょうか。
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書いた人:バイヤーO
『平成ストライク』の装画を手がけた廣野小生氏は中学からの友人です…友人ながら光と空気の表現が素敵な画。
しかし親本との落差が凄いな…並べて愛でるのもまた一興(?)。
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平成ストライク
- 著者名
- 青崎有吾/著 天祢涼/著 乾くるみ/著 井上夢人/著 小森健太朗/著 白井智之/著 千澤のり子/著 貫井徳郎/著 遊井かなめ/著
- 出版社名
- 南雲堂
- 税込価格
- 1,980円