夏に飲むラムネは好きですか?
ガラス瓶にビー玉が入った、あのラムネです。
『遥かに届くきみの聲』を初めて読んだ時、私は瓶ラムネの味を思い出しました。
どこか懐かしく、シュワシュワと甘く透き通った青春の味。
双葉社さんが開催している「双葉文庫ルーキー大賞」という小説賞があります。
『遥かに届くきみの聲』は、その第1回で大賞を受賞した小説です。
さわやかな読後感が味わえる、珠玉の青春小説をご紹介します。
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遥かに届くきみの聲
- 著者名
- 大橋崇行/著
- 出版社名
- 双葉社
- 税込価格
- 693円
かつて天才子役と呼ばれた小宮透は、子役だった過去を隠して高校生活を送ろうとしていた。
しかし、偶然にも同級生となったのは、中学の時に観た朗読コンクールで異彩を放っていた沢本遥という少女だった。
彼女は子役時代の透が朗読に励んでいたことを知っており、自分が所属する“朗読部”へ入るようしつこく勧誘してくる。
だが、透はそれを頑なに拒む。なぜなら、今の透には決して人前で声を出せない理由があった―。
”朗読”という物語
物語は、人前で声を出せない主人公・透と、異彩を放つ少女・遥の朗読部での活動を中心に進みます。
「朗読部」は実際にある部活動で、朗読のコンクールも全国規模で実施されています。
課題書の解釈と感情表現で審査されるのですが、これが見事に文章で表現されているので、思わず何度も唸ってしまいます。
有名な小説や絵本がたくさん出てくるので、本好きな人にもたまらない内容です。
ちなみに、私は作中で登場する梶井基次郎の『檸檬』が、大学の卒業論文の題材として選んでしまったくらい好きなのですが、朗読部の部員が披露する解釈と私の解釈が全く異なっていたので、「そういう考え方もあるのか」と新鮮な気持ちで読めました。
逆に「わかるわかる」とうむうむ頷いてしまう解釈もあり、文学作品に対する深い考察を楽しめるのも、この作品の見所のひとつだと思います。
知らない作品があっても大丈夫。読み進めていけばきっと好きになるので、「そんなに本を読んだことがないよ」という人にももちろんおすすめです。
文章から聞こえてくる”聲”
朗読の場面では、文章から実際の聲が聞こえてきます。
音楽マンガを読んでいて、実際には聞こえないはずの音をマンガから感じたことはありませんか?
これは、その小説版なんだなと私は感じました。
と同時に、朗読の機微がここまで文章で表現できる驚きたるや!
特にクライマックス、『ちいちゃんのかげおくり』と『わすれられないおくりもの』の朗読シーンは圧巻なので、ぜひ読んでいただきたい場面です。
私は会社帰りの電車で読んでいたのですが、涙が止まりませんでした。
著者と登場人物たちの、作品への深い愛情を感じる物語です。
王道の青春小説
主人公の透と遥を中心に、登場人物たちの過去や心情も物語に深みをあたえています。
前向きなやさしさ。ひたむきさ。
つらい過去から立ち上がっていく透と遥の物語を縦軸に、個人的には「この2人くっつくの?くっつかないの?どうなの!?」てなことも、ドキドキ考えながら一気読みしてしまった次第です。
ド直球の青春小説としても見所満載となっております。
ちなみに、YouTubeに発売記念のプロモーションビデオも公開されていますので、こちらを視聴してから読み進めるのもおすすめ!
出来がすばらしいです!
書いた人:一般書・文庫バイヤーM
小説の好きな台詞の箇所にしおりを挟んでおく派。