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『たかが殺人じゃないか』を凌ぐ衝撃…『深夜の博覧会』を読み逃すなかれ!!

2021年1月29日 投稿

皆様、『たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説』は読まれましたか?
何それ、という方はぜひ下記の紹介記事をご覧下さい。

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たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説

著者名
辻真先/著
出版社名
東京創元社
税込価格
2420円

昨年のミステリ系ランキングを席巻した作品ですので、年末年始に読まれた方も多かったのではないでしょうか。
そんなタイミングでなんと!! シリーズの前作『深夜の博覧会 昭和12年の探偵小説』が文庫化されますよ…東京創元社さんさすがですね!!
…ということで、ミステリ好き【バイヤーO】が、真相の衝撃において『たかが殺人じゃないか』を凌ぐこの傑作をご紹介します。


舞台は戦前の名古屋(と銀座)…少年探偵那珂一兵が駆ける!!

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深夜の博覧会 昭和12年の探偵小説

著者名
辻真先/著
出版社名
東京創元社
税込価格
990円

昭和十二年。銀座で似顔絵描きをしている那珂一兵少年はその腕を見込まれ、名古屋で開催中の「汎太平洋平和博覧会」へ新聞挿画を描くために招待される。
華族のディレッタント、満州の富豪や某帝国陸軍人など、キナ臭い面々が蠢く名古屋、博覧会で東西のパビリオン、パノラマ/ジオラマの粋を凝らした館に幻惑される中、銀座には若い女の身体の一部がバラ撒かれる。被害者は満州の富豪・崔桑炎の愛妾である杏蓮と疑われ、彼女は一兵がほのかな思いを寄せる銀座の燐寸売りの少女・澪の姉であった。
東京と名古屋をまたに掛けた猟奇事件に、一兵の推理はいかに…

…という、あらすじを書いているだけでもワクワクしてきますが、戦前の大都市の猥雑なモダニズムや、そこに巣食う様々にギラついた人々が活写されていて、そうしたケレンが大好物の私としては興奮せざるを得ないのでした。『たかが殺人じゃないか』は青春ミステリとしての爽やかさが基調でしたが、こちらは戦前の「探偵小説」の、「夜の夢」の香気が濃厚です。

そしてまたもやご当地名古屋!! 記憶に新しい「愛・地球博」は大学生の時でしたが、「汎太平洋平和博覧会」なんてものが、日中開戦までごくわずかのこんな時代にあったのですね…。
「愛・地球博」ですら行かなかった出不精の【バイヤーO】ですので、こうしてレトロでノスタルジックな過去の博覧会に、辻先生の躍動する筆で遊ばせていただけるのは大変楽しゅうございます。
そしてそして、妖しくゆらめく在りし日の中村遊郭にも…(小声)


特大トリックにボーイミーツガールに…見所しかない大盤振る舞いと、その深奥の衝撃

戦争を挟んで十二年の月日を遡り、『たかが~』では青年探偵だった那珂一兵少年をはじめ、何人かの登場人物にとっての「前日譚」と捉えられる構成、両方読めばもちろんそれぞれの物語世界は深さを増しますが、お話じたいは独立しています。

上述したように、それぞれにテイストの異なるミステリ世界観ですが、共通している点ももちろん多いです。
本格ミステリとしてダイナミックなトリックが仕掛けられていること、せつないボーイミーツガールが彩りを添えていること、そして【バイヤーO】的に最も感じ入ったのが、「ホワイダニット」(whydunit=動機の興趣)の重いインパクトでした。

『深夜の博覧会』と『たかが殺人じゃないか』の二作の間には、言うまでもなく戦争の惨禍が横たわっています。
それに向かっていく/経験した人々の心性がどのようなものであったのか、それが本格ミステリという文学形式と不可分に表現されていて、その主題はすぐれた歴史小説がそうであるように、現代を生きる読者の問題意識にも重い手ごたえを残します。
『深夜の博覧会』の親本刊行は2018年ですが、コロナ禍の今、そこで描かれた驚くべきホワイダニットは読む人により深く刺さるでしょう。まさに探偵小説…本格ミステリにしか描けない、歴史と現実の切り結びと思います。


来る「昭和36年のミステリ」(多分)も楽しみすぎるぜ!!

昭和、平成、令和の激動の中、日本と日本のミステリを見届けてきたレジェンド・辻真先先生ならではの充実のシリーズ。
時代を経て、「探偵小説」「推理小説」「ミステリー」と名前は変わっても、それでしか表現し得ない大切なものがあるという高らかな宣言…三洋堂書店では店舗にて全力応援中です!!



書いた人:バイヤーO
ミステリ好きバイヤー。甘粕正彦ディスリスペクト。
しかしホワイダニットでは久々に食らいましたね…。

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