「おいしい純愛小説」の読み方

シリーズ累計545万部突破の人気恋愛小説

　こんにちは、一般書・文庫バイヤーのMです。

　今年の6月に発売になった『ありふれた祈り』で「おいしいコーヒーのいれ方」(略して「おいコー」)シリーズが完結しました。

　実に7年ぶりの新刊であり最終巻だったため、中学生の頃からこのシリーズの大ファンだった私の衝撃は凄まじく、エピローグの最後のページを読み終えてからしばらくは、続きが読めたうれしさと終わってしまった寂しさとがないまぜになったいわゆる「ロス」状態となり、涙がしばらく止まらず、とりあえず一巻から全巻読み直してはみたものの逆効果でさらに放心状態が続きました。

　それから鼻水をティッシュでビームした後、唐突に「この感動はぜひ多くの人に知ってもらわねば！」という実に書店員らしい発想に思い至り、見所を紹介記事として書いてみました！

　エスプレッソばりの濃い想いをぶつけてみましたので、時間のある方はぜひご一読ください！

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キスまでの距離

著者名

村山由佳／著

出版社名

集英社

税込価格

550円

彼女を守ってあげたい。誰にも渡したくない―。
高校3年になる春、年上のいとこのかれんと同居することになった「僕」。
彼女の秘密を知り、強く惹かれてゆくが…。
切なくピュアなラブ・ストーリー。
(リニューアルカバー版も発売中)

一途でまっすぐな純愛物語

　物語は、主人公・勝利の一人称視点で、親の都合で同居することになった五歳年上のいとこ・かれんとの恋愛模様を中心に進んでいきます。
　「First Season」と「Second Season」からなるシリーズの総冊数は、なんと19冊！
　勝利とかれんの、お互いを想い合うまっすぐさが、このシリーズを通しての最大の見所となっています。
　まぁとにかくじれったい…じれったいけど見守りたい。一途な二人の物語です。
　
　また、この物語は勝利の人間としての成長物語でもあります。
　まだ学生の身分である自分が、どうすれば大切な人をしあわせにしていけるのか。その葛藤や恋敵への嫉妬心は、読んでいるこちらの胸が苦しくなるほどリアルです。それでもゆっくりと時間をかけてかれんと一緒に成長していく勝利の姿は、大切な人との向き合い方を私たちに教えてくれます。
　
　ちなみに、シリーズの中でも、

『雪の降る音』
『聞きたい言葉』
『夢のあとさき』
『蜂蜜色の瞳』
『ありふれた祈り』

　以上五冊は恋愛小説史上に残るといっても過言ではないほど、胸が締め付けられる名シーンが満載です。私はこれを「おいコー胸キュン五部作」と呼んでいます(えぇ、勝手に呼んでいます)。
　何回読み返してもえぐえぐしてきて鼻水が出ます。
　ぜし！(舌かんだ)…ぜひ！シリーズ通して読んでみてください！

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雪の降る音

著者名

村山由佳／著

出版社名

集英社

税込価格

594円

勝利と年上のいとこ、かれんの恋は順調。
でも秘密の恋ゆえに色々と気になる事が…。
美術教師のかれんには彼女に思いを寄せる同僚がいるし、大学生になった勝利は陸上部のマネージャーから告白されて。
微妙な四角関係にゆらぐ恋の行方は!?
(リニューアルカバー版も発売中)

村山由佳先生のやさしい文章表現

　著者である村山由佳先生のうっとりするようなやさしい心理描写や風景描写も、この作品の見所です。
　物語で重要なキーポイントとなる喫茶店「風見鶏」や鴨川の情景、勝利の純情っぷりやかれんの奥手っぷり、かれんの弟・丈の二人へのナイスなツッコミなど、ぜひコーヒーを飲むようにじっくり味わっていただきたいです。

　ちなみに、「おいコー」は村山由佳先生の”あとがき”も含めて「おいコー」なのですが、時々先生が次の展開を思わせぶりにあおってきます。ものすごく気になるあおり方でフェードアウトしていかれます。
　そのため、気になった人はどんどん読み進めることになり、気づいた時には「おいコー」の読書沼に首までどっぷり浸かっているので、ご注意を。

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蜂蜜色の瞳

著者名

村山由佳／著

出版社名

集英社

税込価格

594円

何の保証もないとわかっていても、彼女から強い約束を引き出したい。
僕だけだ、と。一生、僕以外は愛さない、と。
愛おしすぎて、相手を思いやる気持ちが空回りする。それでも少しずつふたりの歩みはすすんでいく…。
人気シリーズ待望のＳｅｃｏｎｄ　Ｓｅａｓｏｎへ。

名曲揃いのバックミュージック

「おいコー」では、各章のタイトルに七〇～八〇年代中心の洋楽のタイトルが使用されています。また、作中ではその曲の歌詞が引用され、勝利や登場人物の心情を代弁することが多いのが特徴です。
　この曲のチョイスが絶妙で、聴いたことがない曲でも、心にじんわり響いてくるのです。

　作中で使用された曲を集めたイメージCDも発売されているので、興味がある方はそちらもおすすめです。ちなみに、私のおすすめは月並みですがルイ・アームストロングの「What A Wonderful World」(すいませんCDには収録されていません)。
「おいコー」以外の読書時間にも活用できるオトクな一枚です。

　曲の多くは喫茶店「風見鶏」で流れるのですが、この店のマスターや勝利が淹れる世界一おいしいコーヒーに憧れて、手挽きのミルを買ってきてコーヒーを淹れるようになった人は私だけではないはず…！

ずっとそばにいてほしいーそう想える人と、出会ったことはありますか？

「おいコー」は25年以上も世代を超えて多くの人に読まれてきた物語です。

　私の主任・店長時代にも、沢山のお客様がレジに持ってきていただくのを見ました。親子で毎年続きを楽しみに読んでいるという声を売場でいただくこともありました。
　それだけ、人を好きになったり大事な人を想うことの、時代を超えても変わらない大切な何かが、この勝利とかれんの物語にはあるということなんだと思います。
　長いシリーズですが、どの世代の方にも、全ての巻で深く心に響くものがあるはずです。
　少しでも興味を持たれた方はぜひ読んでみてください。

　また、現在、コミカライズも連載されていて、12/4(金)に最新５巻が発売になります。
　原作の２巻『僕らの夏』から３巻『彼女の朝』前後までがコミックになっており、小説の雰囲気をそのままマンガで味わえるほどの完成度の高さですので、こちらから読んでいただくのもおすすめです！

　寒い冬、ぜひ「おいしいコーヒーのいれ方」で心をあたためていただけると幸いです。

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おいしいコーヒーのいれ方　３

著者名

青沼裕貴／作画　雀村アオ／構成　結布／装画＆挿画　村山由佳／原作

出版社名

集英社

税込価格

935円

惚れてます!　マスターの前での告白から数か月。
かれんの同僚である英語教師・中沢が彼女に対して猛アタック！
あせる勝利は意を決して、かれんに再度、自分の気持ちを伝えるため、鴨川行きに同行する。
かれんからの返事は果たして……！？

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ありふれた祈り

著者名

村山由佳／著

出版社名

集英社

税込価格

638円

二人が最後に選ぶ道は。試練と波乱の恋の結末は!？
連載開始から25年超えの大人気シリーズ、堂々の完結！

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てのひらの未来

著者名

村山由佳／著

出版社名

集英社

税込価格

638円

あの日、あの時、あの場所で。僕らは何を想っていたんだろう─。
550万人がときめいた、国民的恋愛小説シリーズ。

一人一人の願いが織りなす最終巻の裏側と、その後の彼らの姿を描く、宝物のようなもう一つの物語。

書いた人：一般書・文庫バイヤーM
中学生の頃に「おいコー」に出逢って以来、シリーズの熱狂的な大ファン。
ジャンプノベルズ版・文庫版のシリーズ全巻をコンプリートしたことが密かな自慢。
「おいコー」がきっかけで本が好きになり、アルバイトを経て本屋さんに就職。
原作が完結した今、コミカライズの連載が原作の最後まで続くことを祈る日々。