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【2022年過去ログ⑤】NHK大河ドラマ 鎌倉殿のお薦め本 ~伍ノ巻~

2022年6月27日 投稿

こんにちは!
歴史と地図と旅行が大好きの 大田川店の雪餅です!

2022年NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」
脚本は「真田丸ブーム」を作った三谷幸喜さん、主演は小栗旬さんということで放送前から盛り上がっています。
本記事では、鎌倉殿をより楽しむための歴史本を、毎週の放送と合わせてご紹介します。

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三洋堂書店での受け取りなら、手数料&送料は無料です。

【最終更新:2022/6/27】

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室町時代のお薦め本も紹介しています。良かったら見て下さい。
『新九郎、奔る』『逃げ上手の若君』 漫画界に「室町ブーム」が到来!?

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第21回「仏の眼差し」


源義経(菅田将暉)を失った奥州に攻め込み、藤原泰衡(山本浩司)を討ち取る源頼朝(大泉洋)。
義時(小栗旬)や畠山重忠(中川大志)らが在りし日の義経をしのぶ中、頼朝は毅然と上洛に向けて動き出す。
一方、京の後白河法皇(西田敏行)は丹後局(鈴木京香)と今後の動静を憂慮し、きたるべき日に備えていた。
そんな中、鎌倉では八重(新垣結衣)が子どもたちの世話に奔走。
八重の明るい表情に、政子(小池栄子)も目を細めるが――

「九郎殿は亡くなったが、その名は語り継がれる。
そして、戦の何たるかを知らぬ愚か者として梶原景時の名もまた残る。
これも定めか――。」

周りからは嫌い合っていたと思われ、義経を偲ぶ坂東武者の輪からも外れる景時。
実際の二人は、心の内で互いを信頼し尊敬していた。素敵な解釈です。
それにしても、鎌倉殿の梶原景時(中村獅童)は、現代からの来たのかと疑うくらい自身と周囲を客観視してますね。
10年後の景時追放もどう描かれるのか楽しみです。

さて、八重さんのことを書くと、思い出して辛くなってしまうので……
今週は、北条氏の氏寺となる願成就院の仏像を生み出した仏師 運慶(相島一之)の本をご紹介。
梓澤要先生の小説『荒仏師 運慶』です。

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ひたすら彫る。彫るために生きる。それが仏師だ。
少年の頃、「醜い顔」と嘲られた運慶は、女の姿態や鎌倉武士の強靱な肉体に美を見出していく。
快慶との確執、荒ぶる野心。
棟梁として東大寺南大門の金剛力士像を完成させた絶頂期、病に倒れた。
全く新しい美を創造した、仏師運慶の型破りな人生を描いた本格歴史小説。

全国各地の美術館で催される「運慶展」や、修学旅行の定番「東大寺南大門の金剛力士像」など、雄々しい表情と力強い体躯が特徴的な運慶の仏像は、誰しも見たことがあると思います。
でも仏師運慶の生涯はあまり知られていません。
教科書も主だった仏像の写真紹介のみ。

梓澤先生の小説では、運慶の生涯を幼少期から追うとともに、他の慶派仏師との関係や、各作品の制作エピソードを描いています。
今回の鎌倉殿で見せた、北条時政(坂東彌十郎)との出会いのシーンもあります。
一人の人間としての運慶を知ることで、作品鑑賞がもっと楽しくなります。

運慶の仏像写真集では、丁寧な解説が添えられた『運慶への招待』(朝日新聞出版)がお薦めです。

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第22回「義時の生きる道」


源頼朝(大泉洋)の上洛が決まり、命に従い随行する義時(小栗旬)。
大軍を率いて念願であった京へと上った頼朝は、後白河法皇(西田敏行)、九条兼実(田中直樹)と会談。
今後の世のあり方を思い描く。
そんな中、自分たちには利益のない上洛に、三浦義澄(佐藤B作)、岡崎義実(たかお鷹)、千葉常胤(岡本信人)らが不満を募らせていた。
一方、比企能員(佐藤二朗)は比企家の地位を盤石にするため、一族の比奈(堀田真由)を――

「よいか金剛。鶴丸を恨んではならん。
鶴丸を憎む暇があるのなら、その分、母を敬え。
母のしてきたことを思い出すのだ。
父が、おまえを育て上げてみせる」

八重(新垣結衣)との突然の死別に、自分が今までしてきたことの天罰が下ったと嘆く義時でしたが、三浦義村(山本耕史)から八重の“最期の言葉”を聞き、残された息子の金剛(森優理斗)に語り掛けます。
北条義時の長男の金剛は、後に鎌倉幕府第3代執権・北条泰時となり、紛争の止まぬ武士社会の最初の基本法典「御成敗式目」を制定します。
それ以前の中国に倣った律令や、明治以降の欧米式の法律・法令と違い、日本社会の慣習や倫理観に則った独自色の強い法令(式目)です。
幼少期の父義時からの教えや鶴丸との絆も影響したかと思うと感慨深いですね。

そこで今回は、中世史研究家4名の論考集『中世の罪と罰』(講談社学術文庫)をご紹介。

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網野善彦先生、石井進先生、笠松宏至先生、勝俣鎭夫先生が、鎌倉時代から室町時代に至る中世人の法意識や刑罰の実態について考察しています。

「第1章:お前の母さん……」では、泰時が制定した御成敗式目の特異な項目「悪口罪」について書かれています。
「闘殺の基、悪口より起る」という理念から、軽い悪口で拘禁、重い悪口は流罪とされていました。
今の名誉棄損や侮辱罪とは比べ物にならないくらい重い刑罰です。

他にも、罪人の家を焼却処分する「第2章:家を焼く」や、年貢の未納などの債務が発生した場合に“人”を質入れする「第9章:未進と身代」など。
当時の慣習や法令に絡めた十の論考から、荒々しく理不尽な中世に生きた人々の考え方を伺い知ることができます。
最後は4先生の討論会の模様が55頁にわたり収録されています。個人的にはここが一番好きです。

元が東京大学出版会の雑誌連載ということもあって内容が少し難解ですが、この記事をここまで読んだ歴史好きのあなたなら、きっと楽しく読めると思います。

第23回「狩りと獲物」


嫡男・万寿(金子大地)の披露目の場とするため、御家人を集めて富士の裾野で巻狩りを行うことを決めた源頼朝(大泉洋)。
工藤祐経(坪倉由幸)が賞賛する中、頼朝を憎む曽我十郎(田邊和也)・五郎(田中俊介)兄弟らが謀反を計画。
梶原景時(中村獅童)から企みを知らされた義時(小栗旬)は、急ぎ五郎の烏帽子親である父・北条時政(坂東彌十郎)のもとへと向かう。
不穏な気配が漂う巻狩りには、義時の愛息・金剛(坂口健太郎)も――

「これは敵討ちを装った謀反ではなく、謀反を装った敵討ちにございます」
「お主ら兄弟の討ち入り、見事であった。稀なる美談として末代まで語り継ごう」

成長著しすぎる金剛や、懲りない頼朝のオーバーアクションに霞んでしまいそうですが、今回の主役は曽我兄弟。
源頼朝が行った富士の巻狩りの際に、曽我祐成と曽我時致の兄弟が父親の仇である工藤祐経を討った「曽我兄弟の仇討ち」です。
軍記風の伝記物語『曽我物語(真名本)』として人々に語り継がれ、歴史や史実よりドラマチックを求めた『曽我物語(仮名本)』は、能や歌舞伎などの演劇や物語・小説の題材となり人気を博しました。
現在では「髭切・膝丸」の刀剣伝承にちなみ、ミュージカル『刀剣乱舞』の題材にも使われています。

そこで今回は、曽我兄弟の仇討ちにまつわる本をご紹介。
「鎌倉殿の13人」の時代考証もされている坂井孝一先生の『曽我物語の史実と虚構』です。

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内容や構成に大きな違いのある『吾妻鏡』と『曽我物語(真名本)』を比較検証して、文学や歴史の中に隠された真実に迫っています。
実は、北条側の歴史書『吾妻鏡』では、万寿(頼家)の狩りの様子や頼朝と政子の後日談は詳細に書かれていますが、討ち入り当日の曽我兄弟については殆ど触れられていません。
また、敵討ちの原因となる兄弟の父・河津三郎や祖父・伊東祐親の最期についても大きな違いがあります。
そうした違いには、真実を隠す意図があったのではないか。
今回の「狩りと獲物」は坂井先生の仮説を元にしたシナリオですが、この本ではドラマで描かれなかった巻狩りの前日譚「常陸国の陰謀」についても書かれているので、ドラマを観た後にを読むとより楽しめます。

大衆の心を掴んだ『曽我物語』について詳しく知りたい方は、刀剣画報編集のビジュアル本『曽我物語 源氏をめぐる陰謀と真実』がお薦めです。
錦絵や絵巻物のフルカラー写真から、『曽我物語』の各エピソードを1つ1つ丁寧に辿っています。
また、平家打倒を成し遂げた源氏の宝刀「髭切」「膝丸」など曽我兄弟や源氏にまつわる刀剣伝承や、『忠臣蔵』以上の人気芸能になった歴史、『曽我物語』ゆかりの地の紹介など、盛りだくさんな内容の1冊です。

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第24回「変わらぬ人」


源頼朝(大泉洋)と万寿(金子大地)が巻狩りを終えて無事に戻り、喜ぶ政子(小池栄子)。
しかし、頼朝は自身に代わって鎌倉殿の座に就こうとした弟・範頼(迫田孝也)を許さず、余波が鎌倉を揺るがしていた。
比奈(堀田真由)を傍らに、三浦義村(山本耕史)、金剛(坂口健太郎)と思いを巡らせる義時(小栗旬)。
そんな中、亡き許嫁・源義高(市川染五郎)を慕い続ける大姫(南沙良)は、頼朝が用意した縁談話を歯牙にもかけず――

「私は今、死ななくて良かったと心から思っています。
人は変わるのです。生きている限り前へ進まなくてはならないのです。
私は悔いてはおりませぬ。それで腹を立てる義仲殿ではない。」

巴御前(秋元才加)から源義高を忘れたくない大姫へのメッセージ。
周りの環境に翻弄された大姫も、自分で変わることを決意し、京都へ。
義時と義村、頼朝と範頼の関係も変わらぬままではいられない。
切ないですね。

今回は、丹後局(鈴木京香)の世間話に因み、平安・鎌倉の格式ある衣装「装束(しょうぞく)」の本をご紹介。
公家社会の衣食住や行事儀式などをまとめた「有職故実」を研究している八條忠基先生の『日本の装束解剖図鑑』です。

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十二単(じゅうにひとえ)や束帯(そくたい)、直衣(のうし)、狩衣(かりぎぬ)、水干(すいかん)など、千年以上の昔から連綿と受け継がれてきた「装束」。
宮中や公家社会で用いられてきた色鮮やかな装束は、武家社会の隆盛や明治時代の洋装化などを経て、現代に至ります。
現代でも、即位礼などの宮中儀式をはじめ、神社や大相撲、時代劇、古典文学、絵画作品など、さまざまな場面で見たり聞いたりすることも多いはず。
「誰が何をいつ、どんな風に着ていたのか?」「どんな着こなしをしていたのか?」といった装束のTPOやルール、古代から現代までの装束の変遷をオールカラーイラストでわかりやすく解説しています。

大河ドラマでは「綺麗だな~」で終わってしまう装束の内部構造や着方、その時代の流行や変遷などをざっくり知ることができ、大河ドラマや時代劇の副読本として最適です。
カラフルな装束のイラストを中心に、専門用語は使わず解説してくれているので、大人も子どもも最後まで楽しく読めます。

装束についてもっと深く知りたい方は、八條先生の他の著作も是非読んでみて下さい。
特に「ヤベェ本を買ったぞ…」のツイートで話題になった専門書『有職装束大全』は必見です!
これでもかと言うほど詳細かつ豊富な解説&イラストに、惚れ惚れしてしまいます。

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第25回「天が望んだ男」


身に降りかかる不幸が続き、不安にさいなまれる源頼朝(大泉洋)。
政子(小池栄子)が心配する中、過剰に助言を求められる全成(新納慎也)は困惑し、実衣(宮澤エマ)と思案する。
一方、源頼家(金子大地)に長男の一幡が誕生。
比企能員(佐藤二朗)は鎌倉殿の継承に心を躍らせ、比企の台頭を危惧するりく(宮沢りえ)は北条時政(坂東彌十郎)をたきつける。
そんなとき、頼家に呼び出された義時(小栗旬)は、三浦義村(山本耕史)から――

「朝廷はいつまで経っても我らを番犬扱い。
顔色を伺いながら向こうで暮らすより、この鎌倉を京に負けない都にすることに決めた」

小さな盃で頼朝と酒を酌み交わす時政。
「不満はない。政子はいい婿をもらった」
死期を悟った頼朝は、妻の政子と義時に対して、息子の頼家を託す。
餅と酒に水筒、鈴の音など北条父子に不穏な雰囲気を残しつつ、頼朝がついに死去。享年51歳。

今回は、頼朝が開いた鎌倉幕府に関する本をご紹介。
田中大喜先生編著の『図説 鎌倉幕府』です。

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最新の研究成果をもとに、鎌倉幕府の複雑な機構や政策を豊富な図版とともに解説した図説シリーズ。
「御恩と奉公」「守護・地頭」などうろ覚えな教科書知識の復習や、大河ドラマの予習に最適な入門書です。
頼朝不在の来週から十三人の合議制が発足し(すぐ解体され)、幕府内部の権力政争が益々激化します。
その前に一通り読んでおくと、鎌倉幕府の理解が深まり、ドラマをより楽しめます。

この本は、全3部・55項目で構成されています。
ドラマで気になったキーワード(項目)を目次で検索して、少しずつ読むこともできるので、本を読み切ることが苦手な人にもお薦めです。
【第1部】鎌倉幕府の政争と戦争
治承・寿永の乱(源平合戦)から鎌倉幕府の滅亡まで、時代の流れに沿って重要ポイントを解説
【第2部】鎌倉幕府を個性した人びとと機関
執権や守護・地頭、六波羅探題など、幕府の役職や機関
【第3部】鎌倉幕府の制度と政策
御恩と奉公や御成敗式目など、幕府の運営と実態

いざ、鎌倉へ(そろそろ行こうかな)

如何でしたでしょうか。

大河ドラマは、登場人物がたくさんいてとても賑やかですね!
ニッチな人物が登場する度に、本やネットで調べてみたり。
歴史好きの至福の1年です。

私の趣味全開の大田川店では、室町時代と戦国初期が合体した「中世日本史フェア in 東国」を半永久的に展開中です。
ちょこちょこ中身を入れ替えてますので、お近くの方は是非見に来てください。
北条時行(逃げ上手の若君)と北条早雲(新九郎、奔る)。
二人の北条氏も、いつか大河ドラマになることを願って 人

書いた人:雪餅(大田川店)
歴史や地図、一人旅が大好きの書店員。
青春18きっぷで年3回 鈍行旅行する乗り鉄でもあります。

鎌倉は歴史観光で五度ほど訪れていますが、見どころが多く、まだまだ廻りきれていません。
コロナの波が落ち着いた頃には、『街道をゆく』や『るるぶ鎌倉殿』を読み返しながら、またゆっくり歩きたいですね。

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