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【2022年過去ログ④】NHK大河ドラマ 鎌倉殿のお薦め本 ~肆ノ巻~

2022年5月23日 投稿

こんにちは!
歴史と地図と旅行が大好きの 大田川店の雪餅です!

2022年NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」
脚本は「真田丸ブーム」を作った三谷幸喜さん、主演は小栗旬さんということで放送前から盛り上がっています。
本記事では、鎌倉殿をより楽しむための歴史本を、毎週の放送と合わせてご紹介します。

本の画像をクリックすると、そのままネット注文できます。
三洋堂書店での受け取りなら、手数料&送料は無料です。

【最終更新:2022/5/23】

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室町時代のお薦め本も紹介しています。良かったら見て下さい。
『新九郎、奔る』『逃げ上手の若君』 漫画界に「室町ブーム」が到来!?

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第16回「伝説の幕開け」


御家人たちをまとめ上げた源頼朝(大泉洋)は、弟の範頼(迫田孝也)を総大将、梶原景時(中村獅童)を軍奉行(いくさぶぎょう)とした本軍を派兵。
八重(新垣結衣)に見送られた義時(小栗旬)も従軍し、先発した義経(菅田将暉)と合流する。
後白河法皇(西田敏行)を捕らえて京に籠もる木曽義仲(青木崇高)、福原を拠点に復権を伺う平宗盛(小泉孝太郎)に対し、鎌倉方は義経の天才的な軍略に導かれて奮戦。
畠山重忠(中川大志)らが華々しく駆ける――。

「戦に見栄えなど関わりない。
そんなことのために 大事な兵を無駄死にさせてたまるか。」

誰も思いつかない奇抜な軍略で、義仲や平家と派手に戦い、満面の笑みの源義経でした。
逃げる法皇様に対し「御悲願成就を心よりお祈り奉る。もう一度お会いできないのは己の不徳の致すところ」と伝え、誰かのせいにもせず潔く退き、最期まで義を貫いた木曽義仲はカッコよすぎです。
義仲の唯一の心残り、嫡男の義高の行く末やいかに……。来週も目が離せません。

巴御前(秋元才加)と和田義盛(横田栄司)の出会いのシーンや、畠山重忠の「馬を背負ってでも降りてみせまする!」など、『源平盛衰記』の創作を少しだけ散りばめた演出も、歴史好きにはたまりません。
直接的に描かず匂わせるくらいが丁度いいですね。

さて今週は、景時の発言「攻めかかる時に下馬するのは無様?」から、武士の装備や戦術の変遷が分かる本をご紹介。
樋口隆晴先生と渡辺信吾先生の『図解 武器と甲冑』(ワン・パブリッシング)です。

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刀剣など「美術品」として扱われやすい武器と甲冑を、「実用的な道具」として戦術・戦技とともに解説しています。
武具と合わせて城郭や舟戦の様子もフルーカラーイラストで描かれているので、とても読みやすいです。
また、戦国時代以前の「平安末期~鎌倉時代」と「室町時代(南北朝・戦国への序章)」に半分以上のページを割いている点も貴重です。

鎌倉殿の時代(平安末期)における合戦の主役は「刀」ではなく「弓矢」で、重たい大鎧に身を包み、馬という機動兵器に乗って敵に近づき弓を射る「弓射騎兵」こそ花形でした。
騎射のための馬術や弓術が重要視され、武芸は弓馬の道、武家は弓馬の家とも呼ばれました。
三浦義村(山本耕史)もよく義時と雑談しながら稽古してますね。
そういった武家の土壌があったので、景時は追従郎党(歩兵)の様に下馬して戦うことに抵抗を覚えたのかもしれません。

ちなみに、騎射戦闘を想定して作られた「大鎧」の対弓矢の防御力は相当なものだった様で、『平家物語』の以仁王の乱では、鎧に刺さった63本の矢の内、貫通したのは僅か5本だったとか。
ただでさえ馬で動く的には当てづらいのに、攻め手からしたらこれは大変!
そこで、まず馬を射って落馬させてから近づき射掛ける戦法や、落馬・下馬してから太刀や腰刀で首を取り合う組討戦法が増えていき、次の南北朝時代には大鎧が衰退し白兵戦が増えていきます。
南北朝時代の歴史漫画『逃げ上手の若君』では、最新3D技術を駆使して鎧が詳細に描かれているので、こちらも是非一緒に!

第17回「助命と宿命」


源義経(菅田将暉)の軍略がさえわたり、連勝に沸く鎌倉方。
しかし、木曽義仲(青木崇高)の討伐によって鎌倉に再び暗雲が立ち込める。
義仲の嫡男・義高(市川染五郎)を危険視する源頼朝(大泉洋)は、戦勝報告のため範頼(迫田孝也)とともに鎌倉へ戻っていた義時(小栗旬)に義高の処断を命令。
大姫(落井実結子)を思う政子(小池栄子)は憤り、義高を救うため奔走する。
一方、頼朝に試された義時は八重(新垣結衣)ら家族を思い――。

「御家人たちは今、誰もが怯え疑い合っております。
どうか皆に“信じる心”をお示しください。」

大姫と政子の願いも届かず、源義高が亡くなりました。
頼朝が疎まれることを憂う安達盛長(野添義弘)の支援も受け、義時は伊豆大権現へ逃がす手筈を整えていましたが、最後は義高が「義時を信じることができない」と文を残して手薄な三浦とは逆の信濃へ逃げてしまい、追っ手に見つかってしまいます。

失意の大姫は、今後10年以上も病に伏せたと言われています。
父頼朝はもちろん、母政子や北条家のことも信じられなくなったと思われ、10年後の貴族との縁談拒否や「頼朝最大の失策」と言われる後鳥羽天皇の入内工作の失敗にも繋がってしまったと感じます。
頼朝が抱える、父義朝を平家に殺された怒りの炎は、20年以上経っても消えない。
親族・北条家や御家人が頼朝に抱く不信の念もまた、長く残り続けることになります。

今週は、以前ご紹介した『炎環』と同じく大河ドラマ「草燃える」の原作にもなった 永井路子先生の小説『北条政子』をご紹介。

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伊豆の豪族・北条時政の娘に生まれ、流人源頼朝に遅い恋をした政子。
やがて夫は平家への叛旗をあげる。
源平の合戦、鎌倉幕府開設――御台所になった政子は、実子・頼家や実朝、北条一族、有力御家人達の間で自らの愛憎の深さに思い悩む。
歴史の激流にもまれつつ乱世を生きぬいた女を描いた傑作歴史長編。

権勢欲旺盛な御台所、夫と息子亡き後も政治を動かし続けた尼将軍という権力者のイメージを持たれがちな北条政子ですが、本作では運命に翻弄される等身大の女性として描いています。
頼朝と結婚する直前から公暁による実朝暗殺まで、全て政子の視点から描かれているので、感情移入もしやすいです。
ただ新聞に連載されていたこともあり、約600ページの大ボリュームです。
まずは短編集の『炎環』から読むことをお薦めします。
現在は両作品とも「文春文庫」で発売中です。

第18回「壇ノ浦で舞った男」


苛烈さを増す源平合戦。
必死の抵抗をみせる平宗盛(小泉孝太郎)率いる平家軍に対し、源頼朝(大泉洋)は義経(菅田将暉)に四国、範頼(迫田孝也)に九州を攻めさせ、逃げ道をふさぎにかかる。
しかし、範頼軍は周防で足止めをくらい、義時(小栗旬)・三浦義村(山本耕史)らが状況の打開に奔走。
一方の義経軍も、後白河法皇(西田敏行)の命により摂津から動けずにいた。
そんな中、梶原景時(中村獅童)の献策を一蹴した義経が――。

「義仲も死に、平家も滅んだ。この先 私は誰と戦えば良いのか。
私は戦場でしか役に立たん。」

軍事の天才が故にその戦略を理解されず、苛立つ義経。
兄や法皇さまの願いに応え褒めてもらいたい、その想いが届かず無念さを滲ませる義経。
捕らえた敵将の護送の合間に、親子で語り合う場を用意した義経。
かつて空腹の義経らを里芋煮を振る舞い助けた村人に、約束通りの荷車いっぱいの里芋を与えて、満面の笑みで芋をほおばる義経。
義経の色々な魅力に気づかされる回でした。

今週は、今回の壇ノ浦の戦いで終わった「治承・寿永の乱(源平合戦)」の実像に迫った 川合康先生の『源平合戦の虚像を剥ぐ』をご紹介。

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屍を乗り越え進む坂東武者と文弱の平家公達――。
我々がイメージする源平の角逐は、どこまで真実だったのか?
「平家物語史観」に基づく通説に対し、史料の精緻な読みと実証的な探究によって、鋭く修正をせまる。
さらに、源平合戦の実像や中世民衆の動向、内乱の歴史的所産としての鎌倉幕府の成立過程までを鮮やかに解明しています。

平家物語の冒頭の一節「盛者必衰の理」からくる、都の貴族社会で栄華を極め驕る平家が、東国や北陸から戦力を拡大した源氏軍に負けたことは必然である。
そんな結果論的なイメージを、タイトル通り剥いでくれる名著です。
学術研究本ながらお求めやすい文庫本で、読みやすい文体とエピソードごとにまとめられた構成から、大河ドラマを観てる歴史ファンなら誰でも楽しめると思います。

この本だけでも良いですが、通説の基となった『平家物語』や他の歴史本と合わせて読むと、面白さが倍増するのでお薦めです。
例えば先々週紹介した 樋口隆晴先生と渡辺信吾先生の『図解 武器と甲冑』と一緒に読むと、騎射戦主体の戦闘形態と歩兵の存在、戦闘員の集め方や馬不足・人不足の事情など、源平合戦の理解がより深まります。

第19回「果たせぬ凱旋」


鎌倉入りを許されず京で悲嘆にくれる義経(菅田将暉)。
義時(小栗旬)は大江広元(栗原英雄)に知恵を借り、源頼朝(大泉洋)と義経との関係修復を模索するが、後白河法皇(西田敏行)はそれを許さない。
愚痴をもらす頼朝に対し苦言を呈す八重(新垣結衣)。
この状況を政子(小池栄子)が憂う中、京では義経をめぐって里(三浦透子)と静(石橋静河)が対立。
さらに源行家(杉本哲太)が義経に近づいて頼朝への疑心をあおり――

「子供たちは最後は仲直りします。相手を信じる気持ちが勝るから。
それができぬなら、子供たちの方が利口です。」

人を信じることができない頑な頼朝と、人を信じて騙されやすい真っすぐな義経。
何度も仲直りするチャンスがありましたが、一度も会うことが叶わず、二人の心はすれ違ったまま、別れてしまいました。
主人公義時の行動力と、時政(坂東彌十郎)の優しい言葉で、何とか頼朝×義経仲良しエンドの糸口を見い出したいですね。
来週からは、物語の舞台は奥州へ。

「未曾有のことながら承知致しました」
「もう一度!」「もう一度!」
今週は、後白河法皇と九条兼実(田中直樹)のやり取りが面白かったので、井上靖先生の小説『後白河院』をご紹介。

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朝廷・公卿・武門が入り乱れる覇権争いが苛烈を極めた、激動の平安末期。
千変万化の政治において、常に老獪に立ち回ったのが、源頼朝に「日本国第一の大天狗」と評された後白河院であった。
側近の証言によって不気味に浮かび上がる、謎多き後白河院の肖像。
明晰な史観に基づく異色の歴史小説です。

● 第一部
語り手は、平清盛の正室 時子の叔父にあたる平信範(のぶのり)
鎌倉殿の開始以前の、保元・平治の乱、後白河院と信西の関係など。
● 第二部
語り手は、皇太后 平滋子(建春門院)に長く仕えた中納言
建春門院の入内、後白河院と平清盛の関係、安徳天皇誕生など。
● 第三部
語り手は、頼朝と朝廷との橋渡し役として活躍した吉田経房(つねふさ)
鹿ケ谷の陰謀、源義仲・源義経の都落ち、平家の滅亡など。
● 第四部
語り手は、今回の鎌倉殿で存在感を顕にした九条兼実
関白の地位を追われた後の回想。信西の死や源頼朝追討宣旨など。

平信範の日記『兵範記』(へいはんき)、建春門院中納言の宮廷生活の回想録『たまきはる』、吉田経房の日記『吉記』(きっき)、九条兼実が16歳で内大臣になった1164年から40年間書き綴った日記『玉葉』(ぎょくよう)
これら当時の記録を基にして構成されたドキュメンタリー番組のような文学作品で、ノン・フィクションとフィクションが合わさって、歴史好きも小説好きも楽しめる内容です。
また、後白河院自身の述懐はなく、立場も視点も違う4人が語っているので、底の知れない中世の怪物の正体を皆で少しずつ解き明かしていく歴史ミステリィの味わいもあります。

ちなみに九条兼実は『玉葉』の中で、今回の義経の伊予守・検非違使の兼任を「未曾有」と綴り、後白河法皇の所業を度々「天魔」「暗愚」と厳しく批判していました。
もちろん内心の不満や批判は日記の中だけに止め、それを公言したり、後白河院に正面切って対峙するようなことはないですが、両者は意外との冷たい関係だったようです。
いつか『玉葉』と『吾妻鏡』(あずまかがみ)をじっくり読み比べてみたいですね。

第20回「帰ってきた義経」


京を離れ、奥州へ逃れた源義経(菅田将暉)。
しかし、温かく迎え入れてくれた奥州の覇者・藤原秀衡(田中泯)が程なく死去。
これを知った義時(小栗旬)は、状況を探るため平泉行きを志願するが、義経の才を恐れる源頼朝(大泉洋)は、藤原国衡(平山祐介)・泰衡(山本浩司)兄弟の仲の悪さにつけ込み義経を討つように冷たく命じる。
八重(新垣結衣)に見送られ、平泉へと発たつ義時。
一方、捕らわれた静御前(石橋静河)は鎌倉で――

「天下を目指すには、この奥州はあまりに重かった。
まあ、よい。代わりにお前が日の本一の英雄となった。
これほど嬉しいことはない。
平家を倒したのはお前だ。ようやった九郎!」

藤原秀衡から一番欲しかった言葉をもらえて涙する義経。
平泉で穏やかに暮らすことも望むも叶わず、鎌倉から圧力を受けた藤原泰衡の兵に取り囲まれます……。
最期の弁慶の奮戦ぶりを眺めるシーンは、鎌倉に入る前の和気藹々とした行軍を連想させ、しんみりしていまいますね。
義経が最期に籠った衣川館(高館)は、約500年後に芭蕉が訪れ「夏草や兵どもが夢の跡」という有名な句を詠んでいます。

それにしても、大泉洋さんの演技が凄いです。
東国武士を動かす冷酷な政治家の顔、家族や腹心の探りを躱す胡散臭い男の顔、兄弟二人だけの時に見せた兄の顔。
周囲や視聴者から着実に憎しみを集めつつ、多面的で複雑な頼朝を見事に表現しています。

さて今週は、奥州藤原氏が繁栄を築いた「平泉」のガイド本を3つご紹介。
頼朝に滅ぼされた後も、平泉の中尊寺や毛越寺などの建造物群については保護されました。
残念ながら、後の時代の火災などによって多くは失われてしまいましたが、中尊寺の金色堂(国宝指定)は当時の姿のまま現存しています。
2011年には、平泉の建築・庭園などの遺跡群が世界遺産に登録されました。

1.『古寺を巡る中尊寺』(小学館アーカイヴス)
まず、平泉の中核「中尊寺」のことをザックリ知りたい方には、この1冊!
41頁の薄い本ですが、諸堂や仏像、絵画が大きな写真で紹介されているので見応えがあります。
撮影スポットや散策マップなども充実していて、旅行の携帯にも最適です。
何より税込607円と、とってもお買い得!

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2.『中尊寺と平泉をめぐる』(小学館)
こちらは、中尊寺だけでなく、毛越寺の浄土式庭園など「平泉一帯」の見どころを網羅した1冊です。
もちろん、諸堂や仏像の綺麗な写真も100点以上収録。
平泉文化研究所所長の菅野成寛先生による歴史的・美術的な解説もあり、平泉の基礎知識を学べます。

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3.『図説 平泉 浄土をめざしたみちのくの都』(河出書房新社)
最後は、美術や文化史を専門分野とし世界遺産登録に導いた大矢邦宣先生の著作。
「浄土づくりを目指した背景」「金色堂の謎を解く」など、楽しく読みながら平泉を深く知ることができます。
旅行ガイドブックではありませんが、写真が図説資料が豊富なので読みやすいです。

(2022年5月現在、出版社在庫切れの様です。大田川店には あと1冊あります。)

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いざ、鎌倉へ(兆しが見えてきた!)

如何でしたでしょうか。

大河ドラマは、登場人物がたくさんいてとても賑やかですね!
ニッチな人物が登場する度に、本やネットで調べてみたり。
歴史好きの至福の1年です。

私の趣味全開の大田川店では、室町時代と戦国初期が合体した「中世日本史フェア in 東国」を半永久的に展開中です。
ちょこちょこ中身を入れ替えてますので、お近くの方は是非見に来てください。
北条時行(逃げ上手の若君)と北条早雲(新九郎、奔る)。
二人の北条氏も、いつか大河ドラマになることを願って 人

書いた人:雪餅(大田川店)
歴史や地図、一人旅が大好きの書店員。
青春18きっぷで年3回 鈍行旅行する乗り鉄でもあります。

鎌倉は歴史観光で五度ほど訪れていますが、見どころが多く、まだまだ廻りきれていません。
コロナの波が落ち着いた頃には、『街道をゆく』や『るるぶ鎌倉殿』を読み返しながら、またゆっくり歩きたいですね。

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