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【2022年過去ログ③】NHK大河ドラマ 鎌倉殿のお薦め本 ~参ノ巻~

2022年4月18日 投稿

こんにちは!
歴史と地図と旅行が大好きの 大田川店の雪餅です!

2022年NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」
脚本は「真田丸ブーム」を作った三谷幸喜さん、主演は小栗旬さんということで放送前から盛り上がっています。
本記事では、鎌倉殿をより楽しむための歴史本を、毎週の放送と合わせてご紹介します。

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三洋堂書店での受け取りなら、手数料&送料は無料です。

【最終更新:2022/4/18】

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室町時代のお薦め本も紹介しています。良かったら見て下さい。
『新九郎、奔る』『逃げ上手の若君』 漫画界に「室町ブーム」が到来!?

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第11回「許されざる嘘」


鎌倉では、源頼朝(大泉洋)の新たな御所が完成。
坂東武者に平家の旧領を恩賞として与えるなど着々と体制が整えられ、北条義時(小栗旬)も慌ただしい日々を送っていた。
だが、りく(宮沢りえ)は、頼朝の舅しゅうとである夫・時政(坂東彌十郎)の処遇の低さに不満を募らせる。
一方、都では平清盛(松平健)が敵対勢力の掃討に乗り出し、その苛烈さに人々が恐れおののく。
そんな中、平家討伐を焦る義経(菅田将暉)は集った兄たちの前で――。

「許さなくてもいい。それでも一緒にいるべきです。
共に暮らせばいずれ溝も埋まる。
時とはそう言うもの。人と人との繋がりはそういうもの。」

八重にきっぱり振られたオープニングから、鎌倉新体制の人事、政子の懐妊で沸き立つ周囲、男児誕生への祈りと恩赦、そして許されざる嘘×3?
最後のまさかの暗殺者スカウトも合わせて、各々の思惑が入り乱れる激動の回でした。

さて今週は、直木賞を受賞し1979年の大河『草燃える』の原作の一つにもなった 永井路子先生の小説『炎環(えんかん)』をご紹介。

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鎌倉幕府創成期の4人の人物を主人公にした連作短編で、今回の鎌倉殿の様な嘘と裏切り、そして暗殺といった血生臭い権力闘争を四者四様の視点で描いています。
頼朝の弟で鎌倉殿では煩悩まみれの一面も見せる阿野全成の「悪禅師」
善児とともに頼朝の裏の仕事を担う梶原景時の「黒雪賦」
北条政子の妹で全成から言い寄られている北条保子(実衣)の「いもうと」
そして鎌倉幕府2代執権となる鎌倉殿の主人公北条義時の「覇樹」

それぞれの情熱と野望が激しく燃えさかり、1つの環となる。
「許されざる嘘」の不穏な雰囲気にドキドキした後、併せて読んでもらいたい作品です。

第12回「亀の前事件」


北条義時(小栗旬)から父・伊東祐親(浅野和之)と兄・祐清(竹財輝之助)の死を告げられ、憤る八重(新垣結衣)。
義時は八重をいさめ、源頼朝(大泉洋)から与えられた江間へと八重を送る。
政子(小池栄子)が懐妊し頼朝の嫡男誕生への期待が高まる中、比企能員(佐藤二朗)が比企尼(草笛光子)を伴い鎌倉に出仕。
さらに、三善康信(小林隆)から推挙された官僚・大江広元(栗原英雄)らが都から下向し、新たな関係が動き出す――。

「小四郎、わしゃ降りた。伊豆へ帰る。
やっぱり鎌倉の暮らしは窮屈で性に合わん。
伊豆に帰って米を作っておる方がええ。」

政子が待望の男児を出産するも、治らない頼朝の浮気癖。
それが伝言ゲームであれよあれよと政子まで伝わります。
そして、ここぞとばかりに後妻打ち(後妻の家を打ち壊し)を政子に促し夫の不遇の仕返しを企むりくですが、義経が予想以上に派手に壊したため、りくの兄の牧宗親が報いを受けることに。
「元はと言えば夫の裏切りが原因」とりくと政子に詰め寄られた頼朝は、開き直りと逆ギレで切り抜けようとしますが、、、
最後は北条時政がカッコよく主君の頼朝を𠮟りつけ、クールに去っていきました。

今週は、そんな頼れるパパの一面も持つ北条時政の本をご紹介。
関幸彦先生の『北条時政と北条政子』(日本史リブレット人)です。

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名もない東国の一豪族に過ぎなかった北条氏を一代で鎌倉幕府の権力者に押し上げた時政と、頼朝の御台所として支えて亡き後も幕政を舵取りした政子。
「鎌倉幕府」「北条の時代」を創るために 伊豆・京都・鎌倉、それぞれの地域で二人がどのように関わっていったのか。
その生き様がこの本では解りやすくまとめられています。

今回のマンガのような亀の前事件(後妻打ち)は『吾妻鏡』にも載っている史実で、実際に、時政も頼朝の仕打ちに怒り、一族を率いて伊豆へ帰ってしまったのでした。
しばらく後に政務に復帰し、京都の治安維持や朝廷(後白河院)との政治折衝など精力的に活動していました。
頼朝亡き後の十三人合議制で頭角を現し、初代執権に就き、やがて政所別当として幕府の実権を掌握したのです。

時政は晩節の出来事もあって、強権的で謀略に長けた政治家というイメージでした。
しかし、この本を読んで時政の激動の人生を追っていくと、案外、坂東彌十郎さんが演じるような家族想いでおちゃめなお調子者の性格だったのかもと思えてきます。

第13回「幼なじみの絆」


政子(小池栄子)が男児を出産し源頼朝(大泉洋)の嫡男誕生に沸く鎌倉であったが、頼朝の浮気が大騒動に発展。
激怒した北条時政(坂東彌十郎)は伊豆へと戻り、これを比企家の好機と捉えた能員(佐藤二朗)は源義経(菅田将暉)らに近づく。
そんな中、義時(小栗旬)は八重(新垣結衣)のことを一途に思い、鎌倉と江間を往復する日々を送っていた。
一方、平家に敗北し再起を図る源行家(杉本哲太)は木曽義仲(青木崇高)を頼り――。

「私と八重さんは幼馴染。私の想いはあの頃からずっと変わりません。
私はそれを大事にしたい。
振り向かなくても構わない。八重さんの後ろ姿が幸せそうなら私は満足です。
あなたはやっぱり伊豆の景色が良く似合う。」

義時の想いが実を結び、八重から笑顔の「おかえりなさいませ」が聞けました!
義時さん、良かったね!
木曽義仲と巴御前の信頼関係をチラ見せしたのも素敵な演出でした。
この流れは、考証の坂井先生の仮説に沿って、八重さんが北条泰時の母親の「阿波局」となりそうですね。
義時の執拗なラブレター攻撃の後に結ばれた正室「姫の前」も担うのかしら?
来週以降も楽しみです。

今週は「伊豆の景色が~」の決め台詞に因み、伊豆の歴史本をご紹介。
池谷初恵先生の『鎌倉幕府草創の地 伊豆韮山の中世遺跡群』です。

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のどかな田園風景がひろがる伊豆半島の韮山。
かつてこの地で、源頼朝の旗揚げ、北条早雲の堀越御所攻め、豊臣秀吉軍の韮山城包囲と数々の戦いがくりひろげられた。
中世を通じて列島史につながる歴史の舞台であった韮山に残る中世遺跡をひとつずつたどっていく。

お堅いタイトルですが、カラー写真や図面とまとめられた解説文で、とても読みやすい本です。
著者の池谷先生は、伊豆の国市教育委員会の文化財調査員として実際に発掘調査もされている方で、「伊豆韮山こんなに史跡や文化財があったのか」と驚かされます。
1~4章は「北条の館」を中心とした鎌倉北条氏の遺跡や寺社を紹介していて 『鎌倉殿の大河紀行』 と一緒に読めば、大河ドラマの楽しさが倍増すること間違いなしです。
また『街道をゆく』と同じく、伊豆の歴史旅行の予習本・ガイドブックとしても役立ちます。

5・6章では、堀越公方と後北条氏(北条早雲/伊勢新九郎)の史跡の紹介しています。
   ⇒ 室町時代の東国(坂東)のお薦め本はこちら

さらに、伊豆半島は2012年に日本ジオパーク認定されるほど貴重な地形と景観を持っています。
ジオスポットの散策やレンタカーやレンタサイクルでぐるっと巡るのもお薦めですが、それはまた次の機会に…。

ちなみに、この本は「遺跡を学ぶ」というシリーズの72巻目です。
2022年4月現在、155巻+別冊5巻まで刊行されています。お手頃価格で。
新泉社さん、なんて恐ろしいことをっ!(全部揃えたくなる~~)

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⇒シリーズ「遺跡を学ぶ」公式ページ(新泉社)

第14回「都の義仲」


嫡男の義高(市川染五郎)を鎌倉へと送った木曽義仲(青木崇高)は、平家の追討軍を撃退して上洛。
敗れた平宗盛(小泉孝太郎)は、三種の神器とともに都を落ち延びる。
義仲の活躍に焦る源頼朝(大泉洋)であったが、義仲と後白河法皇(西田敏行)との関係が悪化すると、弟の義経(菅田将暉)を大将とし派兵することを決断。
しかし、利益のない戦に御家人たちが不満を募らせる。
そんな中、義時(小栗旬)は――。

「父(義仲)は義にもとることは決して許しませぬ。
鎌倉殿に義がなければ、必ず受けて立たれます。
この戦に義はございますか?」

義仲&義高親子の今後の展開を思うと、泣けるシーンですね。
北条義時が主人公の『鎌倉殿』は、信濃・北陸方面のシーンが極端に少ないので、まずは簡単に源義仲の入京までの経緯をまとめます。

先の以仁王(木村昴)の令旨を受けて、信濃国(長野県)を拠点とした義仲も平家討伐のために挙兵し、父の地盤であった上野国(群馬県)に進出します。
都から逃れた以仁王の遺児を北陸宮として擁護し、旗頭に奉じます。
翌年には越後・越前で平家方の大軍を破り、北陸道をほぼ平定させます。
さらに「倶利伽羅峠(くりからとうげ)の戦い」では十万もの追討軍を迎え討ち、その2ケ月後には平氏を西国に追いやって入京に成功します。
これら戦上手の快進撃や、北陸宮の存在がカットされているため、いきなり京で田舎者扱いされる不憫な人物に描かれてしまいました。

そこで今週は、義仲のことが分かる歴史本をご紹介。
永井晋先生の『源頼政と木曽義仲 -勝者になれなかった源氏-』です。

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源頼政は、『鎌倉殿』にも登場した平氏政権下での源氏の長老で、以仁王の挙兵に加わりました。
計画は失敗に終わりますが、以仁王と作成した平氏打倒の令旨が、頼朝や義仲を動かし、治承・寿永の乱(源平合戦)の端緒を開いた重要人物といえます。
この本では、ドラマや小説ではあまり語られない頼政と義仲の実像が、皇位継承をめぐる政治的背景も織り交ぜつつ、描かれています。

そう。実は、後白河法皇が入京した義仲に期待した役割は、逃げた平氏追討よりも、飢饉で荒廃した京の治安回復でした。
法皇や公卿たちとの関係悪化の一番の原因は、追討の遅延ではなく「皇位継承問題」だと言われています。
義仲は、武士の立場にありながら、自らが推戴してきた北陸宮を即位させるよう朝廷に口出ししたため、義よりも伝統や格式を重んじる貴族から「田舎者が出しゃばるな!」と怒りを買ったのです。
最終的には皇位を御占で決められますが、義仲も後白河法皇も推していない皇子(守貞親王)が選ばれて何度もやり直したとか……。
(法皇さまに忖度するでしょ、フツー。)

第15回「足固めの儀式」


源義経(菅田将暉)率いる一軍が迫っていると知った木曽義仲(青木崇高)は、後白河法皇(西田敏行)を捕らえて京に籠もる。
一方、鎌倉では御家人たちが謀反を計画。
上総広常(佐藤浩市)も加わり、義仲の嫡男・義高(市川染五郎)を旗頭とし、都ばかりに目を向ける源頼朝(大泉洋)の失脚をたくらむ。
義時(小栗旬)は御家人たちの計画を潰すため大江広元(栗原英雄)らと連携し――。

「お前は自分勝手な男だ。だが、それがお前だ。
頭の中には親父の仇を取ることしかねぇ。それでいいんだよ。
この乱世に坂東に閉じこもるなんざ臆病者のすることだ。
お前は己の道を行けばいい。」

惜しくも上総介広常が誅殺されてしまいました。せつない……。
頼朝や大江広元も怖いですが、三浦義村が指摘した様に、心の中では納得済みで実行前に自分への理由を探しに行った義時も末恐ろしいですね。
後に義時が他の御家人に行ったことを思うと特に。

今回は、謀反の首謀者で、広常の又従兄弟でもある千葉常胤(ちばつねたね)の伝記をご紹介。
福田豊彦先生の『千葉常胤』(吉川弘文館・人物叢書)です。

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千葉常胤は、下総千葉の庄を名字の地とする関東の豪族的領主であり、晩年、頼朝の挙兵に参加して、鎌倉幕府建設の功労者の一人に数えられます。
この本では、彼を巨大武士団の首長、御家人中の代表的人物としてとりあげ、その豪族としての成長・発展と、頼朝政権との結びつきを追究しつつ、鎌倉幕府の基盤を解明しようと試みています。

広常の誅殺後は、常胤が惣領の地位と所領を引き継ぎますが、頼朝が容赦なく御家人を誅殺してみせた結果として、常胤たち房総平氏の立場は弱くなり、頼朝の身内の北条氏・比企氏が鎌倉政権中枢として台頭していった様です。
常胤は一ノ谷の戦いや奥州合戦にも従軍し、当時とても長生きな84歳でこの世を去ります。

その後の千葉氏は、鎌倉の御家人、守護大名、戦国大名として活躍し、房総半島だけでなく東北・東海・九州など全国各地へも広がっていきました。
平安時代から戦国時代に滅亡するまでの千葉氏の歴史については、鈴木佐先生の『千葉一族の歴史』(戎光祥出版)にて、系図・地図・関連写真も交えつつ信仰や文化・史跡などを詳しく解説されています。

上総介広常の生涯を描いた 千野原靖方先生の『上総広常 房総最大の武力を築いた猛将の生涯』も、5/10(火)頃に発売予定です。

いざ、鎌倉へ(夏には行きたいな)

如何でしたでしょうか。

大河ドラマは、登場人物がたくさんいてとても賑やかですね!
ニッチな人物が登場する度に、本やネットで調べてみたり。
歴史好きの至福の1年です。

私の趣味全開の大田川店では、室町時代と戦国初期が合体した「中世日本史フェア in 東国」を半永久的に展開中です。
ちょこちょこ中身を入れ替えてますので、お近くの方は是非見に来てください。
北条時行(逃げ上手の若君)と北条早雲(新九郎、奔る)。
二人の北条氏も、いつか大河ドラマになることを願って 人

書いた人:雪餅(大田川店)
歴史や地図、一人旅が大好きの書店員。
青春18きっぷで年3回 鈍行旅行する乗り鉄でもあります。

鎌倉は歴史観光で五度ほど訪れていますが、見どころが多く、まだまだ廻りきれていません。
コロナの波が落ち着いた頃には、『街道をゆく』や『るるぶ鎌倉殿』を読み返しながら、またゆっくり歩きたいですね。

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