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【2022年過去ログ⑥】NHK大河ドラマ 鎌倉殿のお薦め本 ~陸の巻~

2022年8月8日 投稿

こんにちは!
歴史と地図と旅行が大好きの 大田川店の雪餅です!

2022年NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」
脚本は「真田丸ブーム」を作った三谷幸喜さん、主演は小栗旬さんということで放送前から盛り上がっています。
本記事では、鎌倉殿をより楽しむための歴史本を、毎週の放送と合わせてご紹介します。

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三洋堂書店での受け取りなら、手数料&送料は無料です。

【最終更新:2022/8/8】

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室町時代のお薦め本も紹介しています。良かったら見て下さい。
『新九郎、奔る』『逃げ上手の若君』 漫画界に「室町ブーム」が到来!?

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第26回「悲しむ前に」


安達盛長(野添義弘)が涙に暮れる中、義時(小栗旬)は先を見据え、大江広元(栗原英雄)らと頼朝の嫡男・頼家(金子大地)を次の鎌倉殿とする新体制作りを始める。
しかし、比企能員(佐藤二朗)の力が増すことを嫌うりく(宮沢りえ)が、夫・北条時政(坂東彌十郎)をたきつけてこの流れに対抗。
鎌倉に不穏な空気が流れる中、狩りから戻った頼家は――

「あなた(頼家)はまだ若い。けれど私(政子)と小四郎はあなたの才を信じます。
鎌倉を混乱から守れるのはあなただけ。新しい鎌倉殿になるのです。」

いつの時代も身近な人の死は、突然に訪れます。
関係者への連絡に葬儀の段取り、そして後継者問題。
鎌倉と北条のため、悲しむ前に、今すぐ考えて決めなければならないことが政子と義時に押し寄せます。
義時の投げたくなる気持ちも分かります。

今回は、法華経信仰や八幡信仰に厚く「法華八幡の持者」と称された頼朝に因んで、中世信仰の入門書をご紹介。
末木文美士(すえきふみひこ)先生の『日本仏教史―思想史としてのアプローチ―』『中世の神と仏』の2冊です。

歴史が大好きで宗教史にも興味があるんだけど、難解な思想や専門用語だらけの宗教書は、いつも途中で挫折してしまう。
そんな私の様な「歴史>宗教」タイプにお薦めの宗教入門書です。
2冊とも完読できました!

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『日本仏教史―思想史としてのアプローチ―』(新潮文庫)は、日本の仏教を通史的にまとめた本です。
インドで生まれ中国を経て伝わった「仏教」が日本でどう受け入れられ、時々の政争や時代状況によってどのような変遷を辿っていったのか。
インドや中国の仏教とも異なる「日本の仏教」について、最澄・空海・親鸞・日蓮といった数々の名僧の解釈と共に、その本質を探っています。
各時代の日本の仏教を概観し、耳慣れない仏教用語にも注釈が付けれらているので読みやすいです。

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『中世の神と仏』(日本史リブレット/山川出版社)は、中世の神仏習合思想の中にあった「神道」についてまとめられた本です。
「神仏習合」とは日本土着の神祇信仰(神道)と仏教信仰が融合し一つの信仰体系として再構成された現象で、仏教が浸透し始めた平安時代に生まれました。
鎌倉の鶴岡八幡宮など、武運の神として武家から崇敬を集めた八幡神も、阿弥陀如来が日本に現れた化身(権現)と考えられ、神社内に仏教寺院・仏堂(神宮寺)が作られました。
この本では、鎌倉仏教の興起など仏教の時代と考えられている中世において、日本古来の土着の神への素朴な信仰(神道)が実際にどのように変化していったのかを解説しています。
遅読家の私にも安心の全94ページ!

第27回「鎌倉殿と十三人」


土御門通親(関智一)から源頼朝(大泉洋)の死を知らされ、思案する後鳥羽上皇(尾上松也)。
鎌倉では宿老たちが居並ぶ中、新たに鎌倉殿となった源頼家(金子大地)が自身の方針を表明。
これに北条時政(坂東彌十郎)と比企能員(佐藤二朗)は共に困惑し、梶原景時(中村獅童)は賛辞を贈る。
その様子を政子(小池栄子)に報告した義時(小栗旬)は、弟・北条時連(瀬戸康史)と愛息・頼時(坂口健太郎)を頼家のもとへ送り出し――

「お父上のこともそうやってお支えしてきました。
頼朝様は始めから鎌倉殿だった訳ではございませぬ。
どうか我ら御家人をお信じ下さい。
鎌倉殿の新しい鎌倉を皆で築いて参りましょう!」

源頼家、わずか18歳で、第2代鎌倉殿として頼朝の地位を継承。
一度は退こうとした義時も、姉の説得もあって、頼家を支えていこうと決意します。
しかし突然に圧し掛かった責務や、権力欲旺盛で我の強い御家人たちを前に、頼家は、母政子や叔父義時のことも信じられなくなってしまいます。
ともあれ、タイトル通り? 十三人の合議制が始まります。

今回は、十三人の1人で、頼朝の側近として政務を執り仕切る大江広元(栗原英雄)の本をご紹介。
上杉和彦先生の『人物叢書 大江広元』(吉川弘文館)です。

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鎌倉時代前期の政治家、大江広元(中原広元)。
元は朝廷の実務官人(下級貴族)でしたが、兄の中原親能(川島潤哉)を通じて源頼朝に従い、草創期の幕府の中心的存在となります。
政所別当として守護・地頭制の整備に関わり、朝廷・幕府間の交渉で卓越した政治手腕をふるいました。
頼朝没後、将軍頼家・実朝を支えつつ、北条氏とも協調を図り武家政権の確立に貢献した文人政治家の実像を、新史料を駆使して浮き彫りにします。

ドラマでは、上総広常の誅殺など冷徹な面が目立ちましたが、実際の広元も、情に流されない沈着冷静な実務家であったようです。
「成人してから後、涙を流したことがない」という逸話もあるほど。
今回の、文人を取り込もうとした比企能員の接待を、1人冷たい形相で躱す様は、実に広元らしいですね。
十三人の合議制に反発して鎌倉殿(頼家)が近習政治を宣言したシーンでも、北条時政と比企能員が近習の内訳で諍い、御家人たちが戸惑う中、「仕事に戻りましょう」と呼び掛けて一番に席を立つ姿も印象的です。
ドラマ「鎌倉殿」の中で一番好きな人物です。

そんな広元は、頼朝死後の権力抗争も生き抜き、鎌倉幕府の中心人物として活躍し続けます。
土御門通親など公卿とも独自の連絡網を持ち、執権の北条義時を上回る正四位を得ました。
また、四男の季光は、安芸毛利氏の始祖となり、約300年後の戦国大名 毛利元就・輝元たちにも繋がっています。
ドラマでも今後の活躍が楽しみです。

それにしてもタイトルとの違い、気になりますね~
「鎌倉殿の13人」は、「十三人の合議制」のことじゃない?

第28回「名刀の主」


北条時政(坂東彌十郎)と比企能員(佐藤二朗)との争いにより、義時(小栗旬)と梶原景時(中村獅童)の構想から大きく逸脱し、13人まで膨れ上がった訴訟の取り次ぎを行う宿老たち。
鎌倉殿となり気負う源頼家(金子大地)は、これを自身の力を侮っている結果だと捉えて憤慨し、北条時連(瀬戸康史)・頼時(坂口健太郎)ら若い御家人をそばに置いてけん制する。
そんな中、13人の宿老たちが集まり常陸の御家人の土地争いについて評議を始めるが――

「小四郎殿、其方は上総広常の前でこう申した。
我らは坂東武者のために立ち上がったのだと。源氏は飾りに過ぎぬ。
忘れてはおらぬな。己の道を突き進め。」

ついに始まってしまいました、血生臭い鎌倉幕府の内部抗争。
頼朝の腹心であった梶原景時が御家人66名による連判状によって幕府から追放され滅ぼされた「梶原景時の変」。
頼朝の死後から僅か1年余りの出来事でした。

時政とりく(宮沢りえ)、結城朝光(高橋侃)と実衣(宮澤エマ)、三浦義村(山本耕史)。
様々な思惑が渦巻く鎌倉で、義時はどう突き進むのか。目が離せません。

今回は、時代小説作家7人による歴史小説傑作選『鎌倉燃ゆ』(PHP文芸文庫)をご紹介。

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鎌倉幕府草創期から、二代将軍源頼家の時代に始まった宿老ら十三人による合議制を経て、三代将軍実朝の暗殺、承久の乱まで――。
実力派作家七人による、坂東武者の壮絶な生き様を描いたアンソロジー。

谷津矢車先生の『水草の言い条』
流されるように生きてきた「北条義時」が人生を賭けた大勝負に出る!
秋山香乃先生の『蝸牛』
頼朝に愛する人を殺された「静御前」と「大姫」の邂逅。
滝口康彦先生の『曾我兄弟』
演劇の人気演目となるも謎多き「曾我兄弟」の仇討ち。
吉川永青先生『讒訴の忠』
“讒訴の奸物”となった「梶原景時」の生き様を描く!
髙橋直樹の『非命に斃る』
若くして鎌倉殿となった「源頼家」と母 政子の物語。
矢野隆先生の『重忠なり』
権謀術数うずまく幕府において「畠山重忠」が坂東武者の誇りを見せる!
安部龍太郎先生『八幡宮雪の石階』
三つの場面から浮かび上がる「源実朝」の半生。

7人の主人公の独立した物語で、大河ドラマの合間に1つずつ読み進めることができます。
今回の主役 頼朝の想いを受け継いだ梶原景時の『讒訴の忠』も読み応えがあります。
また、それぞれの先生方が考える七者七様の頼朝・時政・義時像の読み比べも、歴史本にはないアンソロジー小説の醍醐味です。
もちろん、三谷幸喜さんが考える「鎌倉殿の13人」の人物像とも違います。

以前ご紹介した永井路子先生の傑作短編集『炎環』と一緒に、是非読んでみて下さい。

第29回「ままならぬ玉」


御家人たちのバランスが崩れ始めた鎌倉。
義時(小栗旬)は北条と比企との争いの激化を懸念し、頼時(坂口健太郎)と比奈(堀田真由)を前に決意を新たにする。
そんな中、つつじ(北香那)が源頼家(金子大地)の次男・善哉を出産。
三浦義村(山本耕史)が乳母夫となるが、比企能員(佐藤二朗)は長男・一幡こそが嫡男であると牽制。
一方、北条時政(坂東彌十郎)はりく(宮沢りえ)から政子(小池栄子)の次男・千幡を頼家の跡継ぎにと――

「せつは強い。父上が母上と手を携えてこの鎌倉を作ったように、せつとなら鎌倉をまとめていけるような気がする。
儂は弱い。信じてくれる者を頼りたい。」

政子からせつへの後押しと、義時から頼家へのアドバイスを受け、せつの頼家を信じる想いが頼家に伝わりました。
阿野全成(新納慎也)の忘れ物によって、また次回は頼家の「信じる心」が揺らぎそうですが、、、
それぞれの夫婦の仲が深まった良い回でした。

今週は、頼時から改名させられた?泰時に因み、奥富敬之先生の『名字の歴史学』(講談社学術文庫)をご紹介。

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古代においては天皇より、地名や職能、序列などを表すための姓が与えられました。
明治新政府は、徴税や徴兵の必要から戸籍制度を整えるべく、全国民に名字の名乗りを義務づけました。
地名、階層、職制、家系など多岐にわたる要素を組み込み、それぞれが確かに何かを表現する名字。
成り立ちと変遷をたどる詳細かつ壮大な考察で、側面から日本の歴史を通観します。

以前ブームとなった、自分のルーツを知るための名字雑学本とは違い、各時代の名字と名前の変遷を辿っている歴史本です。
源氏平氏の成り立ちや、同じ北条でも義時や泰時(頼時)が“江間”と名乗る理由。
頼時のように烏帽子親から1字を賜る偏諱や、一族の絆を深める通字(系字)についても詳しく解説しています。
ちなみに「俺と同じ“頼”を使うなんて生意気な」という頼家が目じゃないくらい、酷い改名エピソードもあります。

個人的に一番驚いたのは「江戸時代の庶民に苗字はなかった」という通説が変わっていたことです。
私が学校で教わった30年前から研究は進み、「庶民も苗字は持っていたが公称できなかった(自粛していた)」というのが今は正しく、貧窮化した旗本が裕福な農民に「苗字帯刀の免許」を売りつける事例もあったそうです。

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第30回「全成の確率」


源頼家(金子大地)に対して呪詛を行った疑いにより、詮議を受ける阿野全成(新納慎也)。
比企能員(佐藤二朗)はその背後に北条家の暗躍があると確信し、対決姿勢をさらに強める。
そのころ北条家では、夫・全成を巻き込まれて激怒した実衣(宮澤エマ)が父・時政(坂東彌十郎)を追及。
名乗り出ようとする時政だが、りく(宮沢りえ)に止められる。
義時(小栗旬)は北条家を守るために一案を講じ、畠山重忠(中川大志)の助力を得て――

「二度とこのようなことが起きぬよう、鎌倉殿の下で、悪い根を断ち切る! この私が!」

姉の政子(小池栄子)からの「何とかしなさい」という度重なる丸投げに、ほとほと疲れ果てていた義時でしたが、受け身ではなく先んじて動き、根本を正そうと決意します。
政子も「私も考えます」と呟き、御台所として息子の頼家と対峙する決意を――?
今後の、鎌倉殿&親父たちを飛び越えた「政子-義時-義村-広元」の連携を匂わせる回でした。

今週は「(北条派なのは)今のところは、だぞ♡」と匂わせ、梶原景時排斥でも暗躍した三浦義村(山本耕史)の本をご紹介。
高橋秀樹先生の『北条氏と三浦氏』(対決の東国史2)です。

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有力御家人を次々と排斥した北条氏と、その唯一のライバル三浦氏、という通説は正しいのか。
両者の武士団としての存在形態に留意し、『吾妻鏡』の記述を相対化する視点から検証。
両氏の役割と関係に新見解を提示します。

義時や義村の死後に起きたことなので「鎌倉殿の13人」では描かれませんが、やがて執権北条氏とNo.2の三浦氏は対立し、武力衝突してしまいます。(宝治合戦)
その最終的な対立構図や、北条氏の『吾妻鏡』の記述から、北条と三浦は終始ライバル関係というのが通説でした。
この本では、宝治合戦の対決直前まで、両者はドラマの様な良好な関係だったのではないかと説いています。

第1章 頼朝時代の北条氏と三浦氏
第2章 梶原景時排斥から和田合戦まで
第3章 源実朝政権から義時の死まで
第4章 頼経時代の義村と3代執権・泰時
第5章 義村・泰時の死後の宝治合戦

北条氏と三浦氏の幕府内の政治的立ち位置がどう変化したのか、通史的に整理・分析して、両者の関係を探っています。
今までの通説や史料を明快に覆していく様は、読んでいて気持ちがいいです。

ちなみに、対立軸で読み解くこの「対決の東国史シリーズ」は全7巻で刊行中。
次の3巻「足利氏と新田氏」の対等でない対決も面白かったです。
2巻3巻を買ったら……もう 全巻揃えるしかないな。うん。

本棚に並べたくなるカラフルな表紙
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いざ、鎌倉へ(行け……なかった)

如何でしたでしょうか。

大河ドラマは、登場人物がたくさんいてとても賑やかですね!
ニッチな人物が登場する度に、本やネットで調べてみたり。
歴史好きの至福の1年です。

私の趣味全開の大田川店では、室町時代と戦国初期が合体した「中世日本史フェア in 東国」を半永久的に展開中です。
ちょこちょこ中身を入れ替えてますので、お近くの方は是非見に来てください。
北条時行(逃げ上手の若君)と北条早雲(新九郎、奔る)。
二人の北条氏も、いつか大河ドラマになることを願って 人

書いた人:雪餅(大田川店)
歴史や地図、一人旅が大好きの書店員。
青春18きっぷで年3回 鈍行旅行する乗り鉄でもあります。

鎌倉は歴史観光で五度ほど訪れていますが、見どころが多く、まだまだ廻りきれていません。
コロナの波が落ち着いた頃には、『街道をゆく』や『るるぶ鎌倉殿』を読み返しながら、またゆっくり歩きたいですね。

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